
inEos X5
デンツプライシロナ株式会社

デンツプライシロナ株式会社
特徴として、inEos X5は独自の5軸スキャニング技術とロボットアームを搭載しており、模型や印象を自動で様々な角度から撮影する仕組みになっています[5][6]。カメラとアームの複合制御により、模型を最大45°〜105°まで傾斜させて深いアンダーカット(深部や直下部の形状)も正確に捉えられる点が大きな強みです[5]。スキャン方式は青色LEDによるストライプ光投影(構造光方式)で、光学測定の高い品質基準に基づき設計されています[7][8]。このシステムにより、フルアーチ(全顎)模型から単独の歯型、インプラント位置まで精密にデジタル記録できるとされています[9][10]。実際、メーカーが公開している精度はブリッジ模型で2.1±2.8µm、インレーでは1.3±0.4µmという極めて小さな誤差に検証されています[11][12]。
製品種別としては歯科技工室設置型の光学3Dスキャナーであり、院内の光学印象採得機(口腔内スキャナー)とは異なり口腔外での模型スキャン専用です[3]。臨床シーンでは、補綴物全般(ベニア・インレー/アンレー・クラウン・ブリッジ・パーシャルデンチャーなど)やインプラント上部構造の設計に必要なデジタル模型作成で活躍します[13]。例えば、技工士はinEos X5で患者から採得された印象や石膏模型をスキャンし、そのデータを用いてクラウンや義歯、インプラントアバットメント等をCADソフト上で設計・製作することが可能です。特にフルアーチスキャンやトリプルトレー印象の一括スキャン、インプラントのポジションスキャンなど、あらゆる症例に対応できる汎用性の高さが特徴です[14][15]。そのため日常的なクラウン・ブリッジ案件から、複数歯にわたる大型症例、インプラント症例、デンチャー(義歯)設計まで幅広く利用されています[13]。
操作性の面では、直感的でシンプルなワークフローが実現されています。専用のinLabスキャンソフトウェアのインターフェースは明快で、わずか数クリックでデジタル模型を作製できると謳われています[16]。実際のスキャン手順は、模型をスキャナー内にセットしモードを選択後、スタートボタン(またはPC上のコマンド)を押すだけで、自動的にロボットアームが適切な位置・角度にモデルを移動させながら撮影を行います[17][18]。経験の浅いユーザーでもガイドに従って操作しやすい設計で、オートスキャンモードに加え必要に応じて手動操作(マニュアルスキャンモード)も選択可能です[17][19]。例えば多数歯では自動モードで一括取得し、支台歯が数本のみの小規模ケースではマニュアルモードで短時間スキャンといった柔軟な使い分けもできます[19]。
スキャンスピードは、公式にはフルアーチ模型を約60秒以内でデジタル化可能とされています[15]。一見1分程度と聞くと遅く感じるかもしれませんが、撮影からデータ統合まで全自動で行われる点を考慮すると作業効率は高いです。複数カメラを搭載した最新型スキャナー(後述する3Shape E4やMedit T710など)と比較すると単純なスキャン時間は長めですが、その分セットさえすれば追加の手作業なく精密データが取得できる快適性があります[20][21]。また同時に複数のダイ(支台歯模型)を最大4個まで自動スキャンし、手動での差し替えなしに一つのデジタル模型上に統合してくれる機能も搭載されています[22][23]。この「マルチダイスキャン」により、複数補綴物のケースでもスキャン工程の手間が削減され作業効率が向上すると評価されています[23]。
ユーザビリティの細かな配慮として、スキャナー本体は前面が大きく開口し作業スペースが広く取られており、模型の着脱や咬合器の設置がしやすい構造になっています[24]。実際、一般的な咬合器をそのままセットしても視界の邪魔にならず、アームを退避させた状態で模型に素早くアクセスできます[25][24]。これはロボットアームが上部から模型を抱える独特のデザインによる利点で、ユーザーからも「スキャン対象物のセットや位置調整がしやすい」「咬合器ごと装着できるので咬合関係を保ったままスキャンできる」といった声が聞かれます。また、付属ソフトウェア上でスキャンデータの軸補正(模型の水平垂直の補正)やマージンラインの設定も視覚的に行いやすく、細部の編集も直感的にできるとの評価があります[26][27]。
総じて、inEos X5の操作性は「高度な自動化」と「使い勝手の良いインターフェース」の両立が図られており、デジタルスキャンに不慣れな技工士でも短期間のトレーニングで扱いやすい設計と言えるでしょう。特に一連のCAD/CAMワークフロー(スキャン→設計→加工)をinLabシステムで完結させる場合、各工程がシームレスにつながるため、アナログ作業から移行した技工士からも好評です[28][29]。
inEos X5は事実上あらゆる補綴・技工ケースに対応できる汎用スキャナーです。その適応範囲は非常に広く、公式には「ベニア、インレー/アンレー(テーブルトップ)、天然歯支台のクラウンやブリッジ、インプラント上部構造(アバットメント・スクリューリテインブリッジ)、メタルフレームの部分床義歯などあらゆる適応症の作業模型をスキャン可能」とされています[13]。つまり、小さな修復から大きな補綴装置まで一台で網羅できる設計です。
具体的には、単独の支台歯模型や全顎模型はもちろん、上下顎が一体化したトリプルトレー印象もスキャンできます[30]。トリプルトレー法で採得した咬合採得付きの上下顎同時印象をセットすれば、一度で下顎・上顎・咬合関係をまとめてデジタル化できるため、小規模症例の効率化に寄与します[30]。また、通常のアルジネート印象やシリコン印象にも対応しており、形状・サイズの異なる各種トレーをそのまま装置にセットして読み取ることが可能です[31]。特に総義歯や局部床義歯のデジタル製作では、患者の機能印象や咬合床をスキャンして得た粘膜面情報や咬合情報を設計に活かす必要がありますが、inEos X5はそうした大きな印象や機能印象の細部まで正確に取り込めるため適しています[31]。
インプラント症例への適応も優れており、付属・対応するスキャンボディ(スキャン用の仮アバットメント)を用いることで埋入ポジションを高精度に記録できます[32]。ロングスパンの複数インプラントブリッジの場合でも、inEos X5には専用のスキャン戦略が用意されており、延長ブリッジやバーにおける複数インプラントの位置・角度を正確に再現できるとされています[33]。実際にスキャンボディとして、inPost(マルチユニットアバットメント用)やFLO-S(インプラントレベルのスクリュー固定補綴用)が用意され、症例に応じて使い分けることで精度を確保しています[34]。
さらに部分床義歯(RPD)設計向けには、テクスチャスキャン機能によって石膏模型上に描いた設計線やマーキングをデータ上に取り込み可視化できます[35]。例えば鉛筆でロケーター線やクラスプ位置をマーキングしたモデルをスキャンすると、その線がデジタルデータ上に反映され、CADでの設計時に参考にできる仕組みです[35]。このように補綴物だけでなく、矯正用モデルのデジタル化や義歯床の形態記録など、多彩なシーンで応用されています。
まとめると、inEos X5一台でクラウン・ブリッジ、インプラント上部構造、インレー・アンレー、ラミネートベニア、フルデンチャー、部分床義歯、スプリントやサージカルガイド用模型までカバーできるため、デジタルラボの「スキャン業務の万能選手」と評されています[2][13]。技工士が扱うほぼ全てのデジタル化業務に対応できる柔軟性こそ、本機の大きな強みと言えるでしょう[13]。
inEos X5は「オープン型」スキャナーとして設計されており、取得したデータはSTL形式でエクスポート可能です[36]。そのため特定のCADソフトや製造装置に縛られず、ユーザーは自由に設計ソフトウェアや加工装置を選択できます[37]。デンツプライシロナ社のラボ用CADソフト「inLab CADソフトウェア」とはもちろんシームレスに統合されており、スキャンから設計・CAM加工まで一連のワークフローを同社システム内で完結できます[36]。一方で、他社製CADソフトウェア(例:exocadや3Shape社Dental Systemなど)でもSTLデータをインポートすれば問題なく利用できる互換性があります。
特にexocadとの連携については、デンツプライシロナとexocad社の協業によりワークフローの検証が行われており、inEos X5はexocadによるワークフロー検証済みスキャナーとして公式に位置付けられています[36]。exocad 2.3(Matera)以降とinLab CAD SW 19以降の組み合わせで、取得データの円滑な受け渡しが可能になる手順が公開されています[38][39]。具体的には、inLabソフト上でスキャンしたデータをSTLとして出力し、それをexocadのDental DBにリンクさせる方法がマニュアル化されています[38]。このような公式サポートもあり、inEos X5をスキャナーとして使い、設計はexocadで行うといったハイブリッド運用も実際に行われています。
3Shape社のDental Systemについては直接の接続はありませんが、STLインポート機能によりinEos X5のデータを取り込むこと自体は可能です。もっとも、3Shapeユーザーは通常自社スキャナー(Eシリーズ)を使用するケースが多く、inEos X5を単体スキャナーとして組み込む例は稀です。しかしSirona Connect等のプラットフォームを介して、医院側のCEREC Primescan(口腔内スキャナー)で取得したデータをinLabシステム経由でラボ側に送信し、inEos X5で補助スキャンを行うといった連携も可能です[28][29]。例えば、開業医がPrimescanで印象代わりのデータ送信を行い、ラボ側で必要に応じ模型をプリントしてinEos X5で再スキャン・精度補完する、といった使い方も一部では検討されています。
ハードウェア面では、USB2.0接続でPCと通信し、必要に応じてPC自体をネットワーク接続(LAN/WiFi)することで院内・ラボ内ネットワークに組み込めます[40]。inEos X5購入時には専用のハイスペックPCとソフトウェアドングルが付属するパッケージも提供されており[41]、導入後すぐにシステムを稼働させることができます(モニターは別途用意)。ソフトウェアアップデートやサポートもデンツプライシロナ社から提供され、同社のCAD/CAMダウンロードセンター経由で最新バージョンを入手可能です[42][43]。inLabソフトウェア自体は追加のライセンス契約が必要ですが、スキャン専用ライセンスも用意されているため「スキャンだけinEos X5+設計は他社CAD」という運用もしやすくなっています[44]。
以上のように、inEos X5は自社エコシステムとの密な統合と業界標準フォーマットによるオープン性を両立しており、既存ワークフローへの組み込みも柔軟です。デジタルラボを運用する上で他機器・ソフトとの互換性は極めて重要ですが、その点でinEos X5は「閉じた専用機」ではなく「他システムとも調和する汎用スキャナー」として設計されていることが評価軸のひとつとなっています[36][8]。
inEos X5の本体価格は、日本国内ではおよそ280〜300万円(税別)前後です。具体的には発売当初の標準価格が2,800,000円(税別)とされており[45]、2023年時点では3,000,000円(税別)程度の価格設定が公表されています[46]。販売代理店や時期によって多少の変動がありますが、概ね300万円前後が目安と言えます(この金額にはスキャナー本体とinLab基本ソフト等が含まれ、モニターなどは別売の場合があります[47])。なお、中古市場ではより低価格で出回るケースもありますが、新品導入時にはメーカーサポートや保証を含め上述の価格帯が基準となります。
競合他社の類似製品と比較すると、inEos X5はミドル〜ハイエンド帯の価格設定です。例えば3Shape社の同クラス機「E4スキャナー」は日本では定価約440万円(松風による取扱時の価格)と公表されており[48]、ソフトウェアライセンス料などを含むとさらに高額になります。一方、Medit社の「T710スキャナー」は標準価格約258万円(税込約284万円)[49]とされ、プロモーション時には150万円台後半まで値下げされる例もあります[50][51]。このようにinEos X5は、安価さを売りにするオープンスキャナーよりは高めですが、業界トップブランドの最上位機種よりはやや手頃なレンジに位置しています。
導入コストの内訳としては、本体価格に加えてCADソフトウェア費用が考慮必要です。デンツプライシロナ社のinLab CADソフトを導入する場合、そのライセンス費用が別途数十万円〜100万円以上かかるプランがあります(モジュール構成による)。他方、exocadを使用する場合も初期ライセンス費と年間保守料が発生します。したがってスキャナー本体+CADソフト+CAM機器まで含めたデジタルラボ一式の初期投資は数百万円規模となります[46]。例えば、同社の5軸ミリングマシンinLab MC X5は700万円程度、焼成炉や材料なども合わせればフルセットで1000万超の投資になる計算です[46]。ただしスキャナー単体で見れば、従来の大型三次元測定器等に比べれば遥かに安価で、性能向上と価格低減が進んだカテゴリと言えます。
運用コストに関して、inEos X5自体は光学式で消耗品はほぼ無いため維持費は低めです。定期的なキャリブレーション(校正)やクリーニングは必要ですが、これはユーザー自身で行え、メーカー指定の高精度キャリブレーションセットも用意されています[52][53]。メーカー推奨では12ヶ月ごとの機能点検やレンズ清掃が掲示されており[54]、年1回程度の精度チェックを行えば長期にわたり安定した精度を保てます。保証期間終了後の修理費用などは別途かかる可能性がありますが、構造上複雑な可動部はロボットアーム部分くらいで、比較的メンテナンス頻度は少ない印象です。実際、発売から数年経過したユーザーからも「大きな故障もなく安定して動作している」「キャリブレーションで精度も問題ない」との報告があり、堅牢性によりランニングコストは抑えられていると考えられます。
以上をまとめると、初期導入費用は300万円程度+ソフトウェア等の追加投資が必要である一方、日々の運用コストは低く抑えられる機種と言えます。他の高性能スキャナーと比べても極端に高額ではなく、むしろ性能を鑑みればコストパフォーマンスは良好との見方もあります[55]。購入時には各種キャンペーン(例えば他機種からの乗り換え割引等)も活用し、必要なソフト・機器を含めたトータルコストで検討することが重要です。
品質面では、inEos X5はドイツ製造の高品質スキャン技術を採用しており、歯科用途に特化した堅牢な造りになっています[56]。本体重量は約40kgと非常に重く(サイズは幅474×高さ735×奥行460mm)[57]、内部コンポーネントの安定性と筐体剛性の高さが窺えます。重量がある分、動作中の振動や外乱の影響を受けにくく、高精度スキャンの安定性につながっています。また全構成要素が歯科向けに一から設計・生産されており、カメラ光学系も厳格な品質管理のもと製造されています[58][59]。その結果、長時間・多数回の使用でも精度が狂いにくいとの評価があり、社内テストのみならず一部の独立研究でも高い真度・精密さが報告されています[60][55]。
耐久性については、前述のように基本的なメンテナンスを怠らなければ長期間使用可能です。動作部であるロボットアームや回転機構も産業用ロボットに近い設計で、通常の使用でガタつきが生じたという話はほとんど聞きません。メーカーからは「装置移動時は必ず2人以上で持ち、本体底部を支えて運ぶこと」が注意喚起されており[61]、乱雑な取り扱いさえ避ければ物理的な破損リスクも低いでしょう。作業環境としては直射日光や強い照明が当たらない遮光された場所に設置することが推奨されています[62][63]。これは光学機器ゆえに外光の影響を排除し測定精度を維持するためで、実際に使用する際もスキャナーの近くで強いライトを直射しない配慮が望まれます。
精度の信頼性に関しては、多くのユーザーが「再現性が高く、スキャン結果の精度にブレが少ない」と評価しています。特にインプラント症例など精度要求が厳しいケースでも、インプラントポジションを忠実に再現できることが確認されています[33]。一方で、透過性や鏡面性の高い物体は不得意とされ、例えば透明なレジン模型や金属光沢のある補綴物を直接スキャンする場合は表面にスキャンスプレーを吹き付けるなどの工夫が必要です[64]。ただし、通常の石膏模型やシリコン印象材であれば問題なく高品質なデータ取得が可能です[64]。
総じてinEos X5は、医療機器としての信頼性と産業機械としての堅牢性を兼ね備えた造りになっており、適切な管理下で長年にわたって精度を維持できる製品です。実際に「発売以来数年使い続けているが精度のズレを感じない」といったユーザー報告や、「inEos X5でスキャンしたフレームは適合調整がほぼ不要だった」との技工士の声も散見されます[65][66]。こうした実体験からも、本機の品質・精度に対する信頼は比較的高いと言えるでしょう。
ユーザーからの評価をいくつかの軸で整理すると、以下のようなポイントが挙げられます。
精度・スキャン品質: 「精度が抜群に高く安心して使える」という声が多く、特に適合精度の良さが評価されています。ある技工所の検証では、inEos X5でスキャン→CAD設計→削り出ししたクラウンを模型に装着した際、無調整でも全周にわたりぴったり適合したと報告されています[65][66]。また独自の5軸機構により「深い角度の支台歯やアンダーカットも一度で取り残しなく取れる」といった意見もあります[5]。一部の第三者比較では他社スキャナーより真度が良かったとのデータもあり(9機種比較でIneos X5が最も真度が高かったとの報告[67])、精度に関してはユーザーの信頼が厚いようです。
操作性・ワークフロー: 「セットしてボタンを押すだけなので簡単」「ソフトの画面が分かりやすい」といったポジティブな声があります[16]。特にアナログ作業中心だった技工士がデジタルに移行する際、「inEos X5はGUIが親切で戸惑いが少なかった」とのコメントも見られます。反面、「一度のスキャンでフルアーチを取るとデータ量が多く処理に時間がかかる」という指摘や、競合機に比べスキャン時間自体はやや長い点に言及する声もあります。しかしその点も「自動で任せられるので実作業時間には影響しない」と肯定的に捉えるユーザーもいます。総合すると、操作は容易でワークフローにすんなり乗せやすいが、スピード重視のユーザーには物足りない場面もある、といった評価です。
柔軟性・適応範囲: 「何でもスキャンできるので助かる」という声が象徴するように、ケースを選ばず使える万能さが評価されています[13]。特に「印象そのものをスキャンできるので模型を起こす手間が省ける」「咬合器ごとセットできるので咬合関係の再現が確実」といった実用面での利点を挙げるユーザーがいます[24]。一方、「模型の大きさや形状によっては固定に工夫が必要」との意見もあり、小さな象牙質模型などは付属のクランプアダプター等でしっかり固定する必要があります(そのためのアダプターSTLデータも提供されています[68])。総じて適応範囲の広さには満足の声が多く、オールラウンドに使えるスキャナーとしての評価が定着しています。
連携・拡張性: ユーザー評価では「オープン形式で助かる」「exocadでも問題なく使えている」との声があり、データ互換性の高さは安心材料となっています[36]。特に「Sironaシステム以外のフローにも組み込めた」「他社ミリングマシンで加工する際もSTL出力で対応できた」など、他システムとの橋渡しが円滑との意見があります。逆に、inLabソフトウェアについては「ライセンス費用が高め」「年間サポート契約が必要」との指摘も一部にあり、これは連携というよりコスト要因ですが、ソフト面の閉鎖性を懸念する声と言えます。しかし総じて、ハードとしてのinEos X5はどの環境でも使いやすいとのポジティブな評価が支配的です。
コストパフォーマンス: 価格面の評価は様々ですが、「この精度と機能なら価格相応」「むしろ他社高額機より安く感じる」との声もあります。一方で「初期投資が大きい」「小規模ラボにはハードルが高い」との意見もあり、捉え方はユーザーの規模や導入背景によって異なります。導入したユーザーからは「精度の再現性で再製作率が減り、結果的に投資に見合う価値があった」との声も聞かれ、生産性・品質向上による費用対効果を評価する向きもあります[69]。
以上のように、ユーザーの声を総合すると「精度と汎用性に優れ、操作も簡便で信頼できるスキャナー」という評価軸が浮かび上がります。その反面、価格やスキャン速度など一部で最新他機種に劣る点も指摘されますが、総合的な満足度は高く、実際にあるユーザーレビューサイトでは5点満点中4.5以上の評価を付ける投稿も見られます[70]。
デスクトップ型ラボスキャナーの分野では、inEos X5の他にも3Shape社のEシリーズ(E4など)やMedit社のTシリーズ(T710など)が代表的な競合製品です。それぞれハイエンドクラスの性能を持ちますが、inEos X5とはアプローチや強みが異なります。以下、主要な違いと差別化ポイントを整理します。
①スキャン方式・スピード:
- 3Shape E4:マルチカメラ高速スキャン方式。5メガピクセルのカメラを4台搭載し、一度に複数角度から撮影することでスキャン時間を大幅短縮しています[71]。公式スペックではフルアーチ模型を約9秒でスキャン完了する驚異的な速さを誇ります[72](フルアーチ印象は45秒程度[73])。inEos X5の約60秒と比べると圧倒的に迅速で、スピード重視の差別化が図られています。ただし、E4は固定カメラによる撮影中心のため、極端なアンダーカット部分は追加撮影や手動補填が必要になる場合もあります。一方、inEos X5は可動アームで角度を付けて撮影できる分、一度のスキャンで取り残しなく高精度にというコンセプトです[5]。つまり、E4は速度優先、inEos X5は完全性優先という方向性の違いがあります。
②精度・カメラ性能:
- 精度(公称値)は、inEos X5がおよそ2〜4µmレベル[55]、E4とT710はいずれも4µm(ISO 12836 準拠)です[71][77]。わずかな差ですが、inEos X5はメーカー検証上でより低い誤差を示しています[55]。ただ実使用での差は僅少との指摘もあり、いずれも歯科補綴に必要十分な高精度と言えます。カメラ解像度はE4・T710が各500万画素×4台[71][77]、inEos X5は公称値は不明ながらカメラ1台(または2台)構成です。複数カメラのE4/T710はカラー撮影(テクスチャスキャン)にも対応し、模型上の手描き線やシェード情報をカラーで取り込めます[78]。inEos X5もテクスチャスキャン機能はありますが基本はモノクロ情報で、マーキング検出程度に留まります[35]。カラーの有無は設計時の利便性に影響しますが、補綴物精度には関与しないため評価が分かれる点です。
③連携エコシステム:
- 3Shape E4: 3Shape社のDental Systemソフトウェアと連動し、一体のエコシステムを形成します。購入時には専用PCやソフトウェアライセンスがセットとなり[81]、そのままクラウン設計からミリングまで3Shape環境で行えます。ただし年間の保守費用(ライセンス更新料)が必要で、オープンSTL出力も契約内容によっては制限があります。そのため「3Shapeエコシステムに乗るか否か」がE4導入の分かれ目になります。inEos X5は前述の通り自由にSTLを書き出せるオープン性があり[36]、その点でより独立した機器として扱えます。例えば既存でexocad中心のラボであればinEos X5をスキャナーのみ導入できますが、E4導入時はDental Systemごと導入するケースが一般的です。このエコシステム戦略の違いも両者の差別点と言えます。
Medit T710: Medit社は完全オープンを掲げており、専用ソフトMedit Linkはありますがライセンス料不要・更新料不要です。取得データは常にSTL/OBJで出力でき、exocad等とも容易に連携できます[77][82]。inEos X5もオープンですが、付属のinLabソフトは有償で高度機能は別途ライセンスが必要です[44]。運用コスト面ではMeditが有利ですが、その代わりMeditは自社CAMや包括的ワークフローは提供せず、ユーザーが各工程を組み合わせるスタイルです。デンツプライシロナはスキャナーからミリングマシン・材料・サポートまで統合提供できる点で差別化しており、inEos X5もそのラボ統合システムの一部として位置づけられます[4][46]。したがって「単品としてのコスト・柔軟性」を取るならMedit、「包括的ソリューションによる安心感」を取るならSirona、とユーザーの志向によって評価が分かれます。
④物理的仕様:
- inEos X5は大柄で重量級(40kg)ですが、そのおかげで咬合器を丸ごと内部に配置できる大型筐体です[24]。E4やT710は本体が比較的コンパクト(T710は15kg程度[83])で、省スペース・軽量ですが咬合器は付属のアタッチメントで間接的に固定する方式です[84]。例えば3Shapeは付属のアーティキュレーターホルダーとトランスファープレートで咬合器の位置関係を再現します[84]が、Sironaはそのままセット可能です[24]。またinEos X5は筐体が開放的で模型の着脱がしやすい一方、E4はカバー付きで密閉に近い構造(外光の影響を遮断)になっています。Medit T710はオープントップ型でカバーなしです。環境光対策としてはE4が有利ですが、上記の通りinEos X5は設置場所を選ぶことで対応可能です[62]。
前述のとおり、E4は最も高価格帯(日本では400万円以上[48])、T710は低価格帯(150〜250万円程度[50][49])、inEos X5は中間(約300万円[46])となります。予算重視ならMedit、費用に糸目を付けず最高性能とブランドを求めるなら3Shapeという棲み分けもあります。もっとも価格には付帯するソフト等も影響するため、一概比較は難しいですが、Sironaは価格と性能のバランスを狙ったポジションと言えるでしょう。
以上をまとめると、inEos X5の差別化ポイントは「可動5軸によるオールラウンドな高精度スキャン」「咬合器・印象などへの柔軟対応」「オープンでありつつ自社統合ソリューションも有する」点にあります。一方、3Shape E4は「圧倒的スキャン速度と高度なエコシステム」、Medit T710は「低コストで手軽なオープン運用」という強みがあり、ユーザーは自らのニーズに合致するか比較検討すると良いでしょう。
inEos X5はその特性上、幅広いケースに対応したい歯科技工所や高精度を追求するデジタルラボに適した製品です。具体的なユーザー像を挙げると以下のようになります。
総合力の高いラボを目指す歯科技工所: クラウン・ブリッジはもちろん、インプラント上部構造やデンチャー、矯正モデルなど受注する症例が多岐にわたる技工所にとって、inEos X5の汎用性は大きなメリットです。一本のスキャナーでどんな案件にも対応できるため、設備投資を一本化しやすくなります。また、高精度スキャンによって再製作リスクが減り、品質管理もしやすくなるため、顧客(歯科医師)からの信頼向上にもつながります。実際、多様なデジタル業務を展開する大型ラボほどinEos X5を導入している傾向があります。
インプラントや高度補綴を扱うラボ/技工士: マルチインプラントのブリッジやフレームワーク製作では、わずかなスキャン誤差が適合に影響します。inEos X5はそうした高精度志向のケースで威力を発揮するため、インプラント専門の技工士や精密補綴をウリにするラボに向いています。ユーザーの声でも「インプラント症例でも安心して任せられる精度」と評価されており[33]、難易度の高いケースを任されるラボほど本機の強みを活かせるでしょう。
自社一貫CAD/CAM体制を構築したいラボ: デンツプライシロナのinLabシステム(スキャナー+CAD+5軸ミリング+3Dプリンタ等)を導入すれば、材料も含めトータルに統一されたデジタルフローが構築できます[4][46]。inEos X5はその入口となるため、院内ラボやチェーン系ラボで統一ソリューションを重視する場合に適しています。例えば、セレックで有名な歯科医院グループの関連ラボや、メーカー主催のデジタルラボ認定制度に参加するようなケースです。統一プラットフォームの利点は、トラブル時のサポートや各機器の相性問題が少ない点にあります。その意味で信頼性重視のユーザーにも適合します。
一人親方や中小規模ラボの熟練技工士: デジタルへの移行を検討するベテラン技工士で、「色々なシステムを組み合わせるのは難しいので、一社完結型で導入したい」方にも向いています。inEos X5とinLab CAD、必要ならミリングまでSironaで揃えれば、複雑なソフト連携を気にせず運用できます。また「機械が自動でやってくれる部分が多い」ため人手が限られる小規模ラボでも効率を上げやすいでしょう。価格面ではMeditなど安価機に惹かれるかもしれませんが、サポートや安定動作を重視する職人気質の技工士にはSirona製品の安心感が受け入れられています。
院内技工を行う歯科医院(デジタルラボ併設クリニック): 大きな歯科医院や歯科医院グループで、自前の技工室を持ち高度な補綴を院内完結させたい場合にも適します。実際、日本国内でも歯科医院がinEos X5とinLab MC X5を導入し、即日高度補綴に対応している例があります[85]。たとえば兵庫県のある歯科医院では、CERECシステムの精度向上のためにあえてラボ用のinEos X5を導入し、高品質なクラウンやインプラント補綴を院内製作しています[85]。このように、患者にワンランク上のデジタル補綴を提供したい医院や歯科技工士を抱える大型クリニックにとっても、本機は有力な選択肢です。
反対に、単一のニーズに特化したユーザーにはオーバースペックになる可能性もあります。例えば「クラウン・ブリッジしか扱わない小規模ラボ」なら、より低価格な2軸スキャナーやMedit製品でも足りる場合があります。また「とにかくスピード最優先で模型を量産スキャンしたい」という大規模生産ラボは3Shape E4のほうが効率的かもしれません。このように、自身の業務範囲と求める価値(精度・速度・コストなど)を踏まえて、inEos X5がマッチするか判断することが重要です。
inEos X5を導入する際には、円滑な立ち上げと継続運用のために以下のポイントに注意すると良いでしょう。
前提知識・トレーニング: 基本的なPC操作やデジタルデータの取扱いに慣れていることが望ましいです。スキャナー自体の操作は簡便ですが、CADソフトで補綴物を設計する知識・技術が必要となります。導入時にはメーカーや販売店による操作講習を受けられるケースが多いので、可能な限り参加しましょう。また歯科解剖学的な知識や補綴設計のセオリーはアナログと共通ですので、経験豊富な技工士であれば比較的スムーズにデジタルへ移行できます。ただし最初のうちは試し症例で十分練習し、いきなり本番ケースでトラブルが起きないよう社内でワークフローを確立することが大切です。
設置環境: 重量が約40kgありますので、安定した据え置き台や作業机が必要です。振動を避けるため、堅牢な台で水平に設置してください。また前述のように直射日光や強い外光を避ける環境が望ましく、窓際の場合はブラインドで遮光する、室内照明も直接スキャナー内部に入らない配置にする等の工夫が必要です[62][63]。室温はメーカー推奨で10〜35℃、湿度30〜75%(結露なきこと)[62]ですので、空調の効いた室内なら問題ありません。埃が多い環境はレンズ汚れの原因になるため清掃しやすい場所に置き、未使用時はカバーを掛けると良いでしょう。
必要機器・PCスペック: スキャナー本体の他に高性能のWindows PCが必要です(付属PCがある場合は推奨スペックを満たしています)。CADソフトやスキャンデータ処理にはCPU・GPUパワーが要求されるため、最低でもCore i7クラスのCPU、16GB以上のRAM、グラフィックスボード(NVIDIA GeForce系等)を備えたマシンが推奨されます[86]。ストレージも高速SSDで十分な空き容量を確保しましょう。また、inLabソフトを使う場合はソフトウェアドングル用にUSBポートが必要です。UPS(無停電電源装置)も導入すれば停電時の機器保護になるので望ましいです。
導入コスト: 前述の価格帯のとおり、本体約300万円+ソフトウェアや付属品の費用がかかります。加えて年次のソフト保守料(inLabの場合)や、消耗品ではありませんがキャリブレーション用の標準ボディなどを紛失・破損した際の交換費用も見込んでおきましょう。導入時にはメーカーや代理店にトータル見積りを出してもらい、リースや割賦など資金計画を立てることをお勧めします。また古いスキャナーから買い替える場合は下取りキャンペーンなどが使えることもあります。なお、導入後に新機種発表がある可能性もゼロではないため、情報収集も怠らず、タイミングも含めて検討しましょう。
運用条件・メンテナンス: 使用開始後は、定期的な校正(キャリブレーション)を実施してください。付属のキャリブレーションオブジェクトを用いてソフトウェア上で校正することで、長期使用による微妙なズレを補正できます[54]。目安として半年〜1年に一度は行うと安心です。またレンズ部分の清掃は、「必要に応じて」とされていますが[54]、ホコリ等が付着していると感じたら専用クリーナーで慎重に拭き取ります(レンズクリーニングはデリケートなので取扱説明書に従ってください)。可動部には勝手に注油等しないようにし、異音や不具合を感じたら速やかに点検を依頼しましょう。幸い重大な故障事例は少ない機種ですが、保証期間(通常1年)の延長プラン等があれば検討しても良いでしょう。
素材・スキャン対象の留意点: スキャンできる対象は多岐にわたりますが、極端に透光性の高いもの(例:透明レジン模型)や鏡面反射する金属面はそのままでは読み取りにくいです[64]。その際はスキャンスプレーで薄くマット調にコーティングするなど工夫が必要です。また印象材は問題なくスキャン可能ですが、血液や唾液等で汚れたままだと精度に影響する可能性があるため、軽く洗浄・乾燥させてからスキャンすると良いでしょう。模型の固定も、付属のBlu-Tack(練り消し状の固定材)やクランプアダプターを用いて確実に行います[87]。固定が甘いとスキャン途中で模型が動き、データにズレが生じてしまいます。
ソフトウェアアップデート: inLabソフトウェアやファームウェアのアップデート情報には注意し、安定動作している場合でも大きなアップデート前には十分検証する姿勢が大切です。特に他CADソフトと併用の場合、アップデートにより互換性に影響が出る可能性もゼロではないので、メーカーリリースノートを確認しましょう。もっとも、デンツプライシロナは比較的保守的なアップデートで大きな不具合は少ない印象です。
最後に、導入時はメーカーや販売代理店のサポートを積極的に活用してください。初期設定や不明点のフォロー、スタッフトレーニングなど、充実した支援を受けられるはずです。特に精度検証の方法や、既存アナログ工程との移行について相談しておくと安心です。以上の点に注意して準備すれば、inEos X5はきっと強力なデジタルツールとしてラボ業務の質と効率を高めてくれるでしょう。
【日本市場での導入実例】
日本国内でもinEos X5の導入事例が増えてきています。例えば、神戸の聖栄歯科医院・矯正歯科では「より高精度な補綴物提供のため」に院内ラボにinEos X5とinLab MC X5を導入したと公式サイトで紹介しています[85]。また、九州デンタルショー等の展示会でも標準スキャナーとして瞬く間に市場に確立された製品と紹介されており[88]、国内技工所からの認知度・信頼度も高いことが窺えます。ユーザーレビューでは「他社製から乗り換えて満足している」「精度優先なら最有力」といった声が見られ、特に質にこだわる日技(日本歯科技工士)層から支持されている印象です。
以上、Dentsply Sironaのラボスキャナー「inEos X5」について、特徴から他製品比較、ユーザー評価まで詳細にレビューしました。デジタル技工への移行や設備投資の判断材料として、本稿の情報が技工士や歯科医院の皆様のお役に立てば幸いです。
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