Primescan
Primescan デンツプライシロナ株式会社
評価なし
1. 製品概要(用途・特徴・製品種別・臨床シーン) Dentsply Sirona社の『Primescan(プライムスキャン)』は、歯科用CAD/CAMシステム「CEREC」の最新世代として2019年に発売された次世代型の口腔内スキャナーです[1] [2] 。口腔内の歯列や補綴物の形状を高速かつ高精度にデジタル印象採得でき、従来のシリコン印象材を使わずにクラウン・ブリッジなど補綴物の設計製作 、インプラントのスキャン(アバットメント・サージカルガイド作製)、矯正治療用モデルの作製など幅広い臨床シーン で活用できます[3] 。例えば、Primescanでスキャンしたデータを即座に院内のCADソフトに取り込み、その場で補綴物をデザイン・ミリングすることで が可能です 。一方、取得データをクラウド経由でラボへ送信し技工物を作製してもらうこともでき、 にも対応した柔軟なワークフローを構築できます 。
即日治療(One Visit Dentistry)
院内完結型にもラボ連携型
Primescan最大の特徴は、その優れた光学スキャン技術 にあります。特許技術「ハイフリークエンシーコントラストアナリシス (HFCA)」によって1秒間に100億回以上の高速コントラスト解析を行い[7] 、高解像度の「スマートピクセルセンサー」により毎秒100万以上の3Dデータポイントを取得してリアルで鮮明なカラー3Dモデルを生成します[8] 。またダイナミック深度スキャン 技術により最大20mmという深い被写界深度を実現しており、従来はキャプチャが難しかった歯肉縁下や深部の領域も高精度に記録できます[9] 。これら先進技術により、Primescanは光沢のある金属修復物や最遠心の大臼歯など困難な部位でも確実にスキャン可能 であり、スキャン中に多少速く動かしてもデータ欠損なく完全な3Dモデルがリアルタイム表示できる性能を備えています[10] [11] 。さらにモーションセンサー によって本体をホルダーから持ち上げると即座にスキャンを開始でき、セルフヒーティング機能 でスキャナー先端が曇らない設計になるなど、臨床で使いやすい工夫も凝らされています[10] 。
製品構成としては、大きな可動式タッチパネル一体型のカートタイプ(CEREC Primescan AC) と、ノートPC上で動作させるラップトップタイプ(Primescan Connect) の2種類があります[12] 。カートタイプは21.5インチのワイドタッチスクリーンとタッチパッドを搭載した一体型ワークステーションで、院内を移動しながら直感的な操作が可能です[13] 。一方のConnect(接続型)は高性能PCさえ用意すればカートを導入せずに済むためより手頃な価格 で提供され、日本市場でも2022年以降に発売されました[14] 。スキャナーハンドピース部はやや大型ですが滅菌可能な金属スリーブまたはディスポーザブルの使い捨てスリーブ が選択可能で、衛生管理にも配慮されています[15] 。なお、日本国内での価格はCEREC Primescanフルシステムが約690万円、DI(スキャナー単体版)が約520万円 (いずれも税別標準価格)と案内されています[16] 。高額ではありますが、「精度・操作性・スピードに優れ、当社従来機(Omnicam)比でデータ量5倍・スキャン時間1/4に短縮」と謳われるその性能は次世代に相応しく、デジタル診療への大きな投資効果が期待できる製品です[17] 。
2. 評価軸に基づくレビュー(操作性/症例適応/連携性/価格/品質/ユーザーの声)
操作性(スキャナーの扱いやすさ) Primescanの操作性は総合的に高い評価 を得ています。実際に使用した歯科医師からは「スキャン時のラグがなく非常にスムーズで、使い勝手の総合評価が高い」との声があり[18] 、スキャン開始からデータ表示までストレスなく行える点は大きな利点です。ワイドタッチスクリーン付きの専用カートは視認性が良く直感的な操作が可能で、スキャナー本体をホルダーから外すだけで自動的に準備完了するモーションセンサー や、レンズの曇りを防ぐセルフヒーティング 機能など、細部までワークフロー効率を高める工夫が施されています[10] 。これによりアシスタント等へのタスク委譲(デリゲーション) も容易になり、歯科医師以外のスタッフがスキャン操作を担当して時間短縮することも可能です[19] 。
一方でスキャナー自体の重量・サイズ は他社製品と比べると大きめで、本体ハンドピース部の重量は約525gに達します[20] 。このため「製品自体が大きく重いため、慣れるまでは使いにくいと感じる人がいる」と指摘されるように、初めはその重さに戸惑うユーザーもいるようです[21] 。しかしながら、カメラ部の大型化は決して短所ではなくスキャン精度の向上に寄与する利点 でもあります。実際にPrimescanを使用した歯科医師は「まず手にして感じるのはカメラが大きく重くなった点だが、これはI.O.Sにとって不利ではなくむしろ真度・精度の面で有利に働く」と述べています[22] 。カメラ視野が広く被写界深度が20mmと深いため、カメラを小まめに傾けなくても広範囲を一度に撮影でき、従来機では”影”になっていた部位も容易に記録できることを報告しています[23] 。著者は「Primescanのカメラサイズは臨床で十分使用でき、口腔内の大きさを問わず撮影可能であった。最後臼歯遠心部も撮影方法をマスターすれば楽に光学印象できる」と述べており[24] 、スキャナーの大きさによる制約はトレーニング次第で克服可能 であることがわかります。総じてPrimescanの操作性は、重量面のデメリットを高度なアシスト機能と習熟によるカバーで補い、「使いやすさ」と「高性能」を両立 していると言えるでしょう。
症例適応(どんな症例に向いているか) Primescanは単冠からフルマウスまで あらゆるスキャンに対応できる汎用性の高い機種です[3] 。高精度かつ大量のデータ取得が可能なため、支台歯の細部形態からフルアーチの全体像まで 精密に記録でき、補綴治療はもちろんインプラントの印象、マウスピースやスプリント、矯正用模型の作製まで幅広い用途で活用されています[3] 。特に被写界深度が深いため歯肉縁下に及ぶ支台歯辺縁やインプラントアバットメント のスキャン精度に優れ、肉眼では難しいマージンラインの識別も3Dモデル上で容易になります。実際、あるユーザーはPrimescanでスキャンした補綴物の適合精度を25倍拡大で検証し、隣接面の適合性まで非常に良好であったと報告しています[25] 。これは深いマージンや隣接面の細部まで忠実に再現できたことを意味しており、その高精度ぶりが伺えます。
またPrimescanは各種材料の表面 も難なく取得できる点で症例適応力が高いとされています。金属修復物やグロッシーなレジン表面など、光学印象では反射やノイズが問題となりやすい場面でも「Primescanなら問題ありません」と謳われており[10] 、実際ユーザーからも「天然歯および様々なマテリアルの修復物の表面を迅速かつ容易にスキャンできる」と高評価を受けています[26] 。従来パウダースプレーが必要だったシチュエーションでもPrimescanは無粉末でカラー スキャン可能であり[27] 、術者の負担を減らしながら高品質なデジタル印象を得ることができます。
もっとも、全ての臨床ケースがデジタル印象で完結できるわけではない 点には注意が必要です。例えば多数歯欠損を伴う長いスパンの補綴 や複数本のインプラントを含むケース では、現在でも従来のシリコン印象の方が適している可能性が指摘されています[28] 。また無歯顎に近い症例(粘膜のみの印象) はスキャナーの位置合わせが難しく、広範囲の補綴物や深い咬合採得も依然としてチャレンジングです[28] 。Primescan自体のスキャン能力は非常に高いものの、症例に応じては従来法との使い分けや補助的手技(例えば深いアンダーカット部分にレジンを填塞してデータ欠損を防ぐ、咬合採得用の咬合器具を用いる等[29] )も併用することで、より確実な臨床成果につながるでしょう。
連携性(他システムとの接続・データ活用) Primescanはオープンなデータ連携 をサポートしており、取得したスキャンデータは標準的なSTL形式などで出力・変換して様々なCADソフトやラボ用システムで活用できます[30] 。Dentsply Sirona社のクラウドサービス「Connect Case Center」や「DS Core」に対応しており、スキャン後ワンクリックでラボや外部パートナーにデータ送信 することが可能です[30] 。送信されたデータはクラウド上で安全に共有・閲覧でき、技工所側でも高精細モデルを即座に受け取って設計を開始できます[30] 。このようにPrimescanは院内から院外へのデータの橋渡し をシームレスに行える設計で、デジタルワークフローの効率化に大きく貢献します。
また、PrimescanはCERECシステムとの統合 に優れている点も特筆されます。CEREC Primescan ACではスキャン後すぐに専用のCERECソフトウェア上で補綴物設計が可能で、そのまま「Primemill」ミリングマシンや「SpeedFire」焼成器と連携したチェアサイド一貫システム を構築できます[31] [32] 。同社のガイデッドサージェリー用ソフトや矯正用ソフト(SureSmileなど)ともデータ互換性があり、インプラント埋入ガイドのデザイン やマウスピース矯正プランの作成 にもスキャンデータを直接活用できます。さらに他社アプリケーションとの連携としては、例えばインビザライン用のiTeroほどの専用連携機能はないものの、近年Align社はPrimescan等他社スキャナーからのデータ受け入れも行っており(STLデータアップロード)、Primescanで取得したデータからインビザライン用モデル作製も可能です。加えてオープンデータゆえエクソキャド(Exocad)や3Shape Dental Systemなどサードパーティ製CADソフト にもスムーズに取り込めるため、既存の技工所ワークフローに統合しやすい利点もあります。以上のように、閉鎖的なシステムに縛られず幅広いデジタルエコシステムで活用できる 点はPrimescanの強みと言えるでしょう。
価格(導入費用とランニングコスト) Primescanの価格はハイエンド機種ならではの高価格帯 です。日本国内の場合、CERECソフト・ミリング装置などを含むフルセットの「CEREC Primescan AC」で約690万円(税別) 、スキャナー単体+基本ソフトの「DI Primescan」で約520万円 と公表されています[16] 。これは3Shape TRIOSやAlign iTeroと並んで市場最高クラスの価格帯ですが、高度な開発投資による最先端機能を備えているため「価格相応の価値がある」とも評価されています[33] 。ただし、価格重視のユーザーにとっては慎重な検討が必要な水準であり、中小規模の医院では導入コストのハードルを感じる向きもあるでしょう[21] 。
初期費用以外に留意すべきは維持費用や追加コスト です。Primescan自体には月額ライセンス料は基本的に不要ですが、オプションで保守サービス契約 を結ぶ場合は年間十数万円程度の費用が発生します[34] (購入初年度は無償保証、以降任意加入で年額18万円程度のプランあり[34] )。これはソフトウェアのアップデートや故障時の対応を含むもので、安心を買う意味で加入を検討する価値があります。また、カート型の場合は内蔵PC込みの価格ですが、ラップトップ型のPrimescan Connectでは推奨スペックを満たすPC (例:Intel i7以上CPU・RAM32GB・Windows10 64bitなど[35] )を別途用意する必要があり、その分のコスト計上も必要です。スキャナー先端の交換用チップ(スリーブ) も消耗品であり、滅菌用に複数本を用意する場合やディスポーザブル採用時には追加費用となります。いずれも大きな負担ではありませんが、本体価格以外に発生し得る細かなコスト として把握しておくと良いでしょう。
運用上のコストでは、データ送信のクラウド利用料 がほぼ無料なのも注目点です。例えば他社のiTeroは年間または月額の接続料が必要なプランがありますが[36] [37] 、PrimescanのConnect Case Center利用料は基本無償で、大容量データも追加料金なく送受信できます。そのためランニングコストが低く 抑えられる点は経済的メリットです。一方、もし即日補綴の院内完結型運用 を目指す場合は、ミリングマシン「Primemill」(参考価格約500~600万円)やセラミック焼成炉「SpeedFire」等の追加導入が必要で、システム全体では総額1,000万円超 の投資規模となります[38] [39] 。その場合、ブロック材料や切削バー、メンテナンス部品などの費用も継続的にかかるため、投資回収に見合う症例数や収益計画 を立てて導入することが重要です。
品質(スキャン精度・データ品質・信頼性) Primescanのスキャン品質は現行製品中でもトップクラス と評価されています。客観的な検証では「フルアーチスキャンを45秒足らずで完了し、調査対象中もっとも高い精度(トゥルーネス+プレシジョン)を示した」との報告もあり[40] 、実際ある研究では「最も高精度なIOSはCEREC Primescanであった」 と結論づけています[41] 。高精度ながらデータの一貫性・再現性 も優秀で、取得したデジタルモデルはほとんど歪みなく現実の咬合関係や形態を反映します。そのため作製された補綴物やマウスピースの適合も良好で、患者へのフィットも精密になります。実際に技工所からも「PrimescanとPrimescan Connectはいずれも優れた精度と信頼性の高い品質を備えているため、あらゆる修復物や装置にフィットさせるのに理想的。生成されるデジタルモデルの品質はラボにも高く評価されている」という声が聞かれています[42] 。
データ品質面では、カラー撮影による鮮明なフルカラー3Dモデル が得られる点も品質向上に寄与しています。患者さんへの説明時に口腔内をリアルカラーで再現したモデルを見せることで視覚的に理解を促せるほか、シェード(歯の色調)確認や記録にも活用できます。Primescanはう蝕検出機能 (光学う蝕検知)は搭載していませんが[43] 、競合のiTero 5DやTRIOS 4が持つNIRI画像・蛍光画像によるう蝕診断はあくまで補助的機能であるため、無くとも臨床上大きな問題はありません。それよりもPrimescanはスキャンデータの詳細さ・密度の高さ で勝り、微細な形態まで漏れなく記録できる点が評価されています[8] 。例えば深部に位置するインプラントのスキャンボディ形状や、支台歯のマージン部の微小な段差、咬合面の複雑なレリーフまで忠実に再現されたデータが得られるため、補綴物設計時に追加の調整が減り、再製作リスクも軽減します。
ハードウェアの品質・信頼性も高く、Primescanには完全に密閉されたスキャンウィンドウ が採用されています[44] 。これによりスキャン処理中に唾液や湿気が内部光学系に浸入するのを防止 し、長期的な故障リスクを低減しています。カート部も洗練されたデザインで、表面は滑らかかつ耐久性のある素材が使われているため清拭・消毒が容易 で衛生的です[13] 。スキャナー先端もオートクレーブ滅菌に耐える設計で(繰り返し高圧蒸気滅菌が可能)、院内感染対策器材としての品質基準もクリアしています[44] 。総じてPrimescanはスキャンデータの質から機器そのものの品質まで高水準 にまとめられており、その信頼性の高さが多くのユーザーに支持される要因となっています。
ユーザーの声(口コミ・評価) Primescan導入医院からは概ね好意的な口コミ が寄せられています。実際に2年以上Primescanを使用している海外ユーザーは「Primescanは素晴らしい。即日治療がお気に入りで、もうかなり長い間PVS(シリコン)印象は取っていない」と高く評価しており[45] 、デジタルワークフローへの移行による臨床効率の向上を実感しているようです。また国内ユーザーからも「スキャン速度が非常に速く、タイムラグも無いため快適」「スキャナーのサイズ以外はほとんどの項目で高評価」といった声が上がっています[18] 。特にスキャンスピードの速さ は多くのユーザーが指摘するメリットで、「Primescanを使うとスキャン開始から完了までが驚くほど早い」「撮影が滑らかでストレスがない」といったコメントが聞かれます。実際、ある検証ではPrimescanでフルアーチをわずか25~45秒程度でスキャンできたとの報告もあり[33] [40] 、従来数分かかっていた工程が大幅短縮される点を評価する声が多いようです。
一方で指摘される短所や要望 もいくつか見られます。最大のものは前述のスキャナーの重量・大きさ で、「慣れるまでは扱いづらい」「長時間連続スキャンしていると手が疲れる」といった声が一部からあります[21] 。しかし先述の通り、カメラ大型化による視野拡大や精度向上というメリットもあるため、多くのユーザーは「重さはあるが許容範囲」「使っているうちに気にならなくなる」と肯定的に捉えています。また価格面についても「高性能だが高価」「ROI(投資対効果)を考えると導入タイミングが難しい」という声があり、特に小規模クリニックでは導入を躊躇する一因となっています[21] 。ただし逆に、「高機能ゆえ価格相応の価値がある」「他製品と比べても抜群に精度が良いので結果的に無駄が減りコストに見合う」といった肯定的な意見も聞かれ、高額投資に見合うリターンを得ているユーザーも多い印象です。
その他、「CERECシステム全体ではなくPrimescan単体で導入したが、十分に活用できている」「今後ミリングを追加して即日補綴に展開したい」といった声もあり、まずはスキャナーのみ導入して段階的にデジタル化を進めるケースも見受けられます。サポート体制に関しては「メーカーや代理店のトレーニングが充実しており安心できた」「導入後のフォローアップが手厚く、使いこなしのコツを学べた」との評価もあり、歴史ある大手メーカー製品だけにアフターサポート面での信頼性 もユーザー満足度に繋がっているようです[46][47] 。総合すると、Primescanは「高い初期投資に見合う性能と生産性向上効果が得られた」というポジティブな評価が大半を占めており、導入ユーザーの満足度は非常に高い製品と言えるでしょう。
3. 類似製品との比較と差別化ポイント(iTero、TRIOS など) 近年、口腔内スキャナー市場には多数の製品が存在しますが、中でも3Shape社のTRIOSシリーズ やAlign社(アライン)のiTeroシリーズ はPrimescanと並ぶ代表的な競合機種です。それぞれ特徴が異なるため、導入検討時には以下のようなポイントで比較・検討すると良いでしょう。
3Shape TRIOSシリーズ (デンマーク製): 高精度・高速スキャンで定評のあるシリーズです。例えば「TRIOS 4」はPrimescanと同様にスキャン速度が非常に速く、リアルカラー印象や※う蝕検知(蛍光技術による)機能も備えています[18] 。ハンドピースは約340g前後 と軽量でサイズも標準的なため操作性(取り回しやすさ) では優位との評価があります[33] 。データ互換性も高くオープンなエコシステムを構築しやすいことから世界的なシェアも高い 機種です。日本市場でも販売価格はPrimescanと同等レベル(TRIOS 4基本セットで約720万円[48] )ですが、購入形態によっては月額リースや保守込みプランなど柔軟な提供もあります。差別化ポイント としては、TRIOSはペン型の軽量スキャナーで長時間スキャンでも疲れにくく、画質・精度もトップクラスですが、Primescanと比較するとカート一体の専用システムではない ため、機器統合によるワークフロー最適化や同社ミリング機とのシームレスな連携はPrimescan(CEREC)の方が優れます。またTRIOSはオプションでワイヤレスモデル もあり機動性に優れますが、PrimescanもConnect版でラップトップ利用が可能になるなど、徐々に使用形態の差は縮まってきています。
Align iTeroシリーズ (アメリカ製): インビザラインで知られるAlign Technology社のスキャナーで、特にマウスピース矯正分野に強み を持ちます。iTeroでスキャンするとインビザラインのシミュレーションや患者説明用の咬合変化予測など独自ソフト連携 が可能で、インビザライン提供医院には最適とされています[49] 。一方でスキャナー本体は約500gと重め でサイズも大きく、ユーザーから「持ちにくい」「他製品よりスムーズさがやや劣る」との声もあります[49] 。スキャン速度も最新機種でかなり改善していますが、それでもPrimescanやTRIOSに比べ「やや遅い」「画像の合成に間が生じる」と指摘されることがあります[50] 。価格帯も高額で、Element 5D(う蝕検知機能付きモデル)では日本では600万円以上と報じられています[37] 。差別化ポイント は何と言ってもインビザラインとのシームレスな統合 であり、矯正治療メインの医院にはiTeroが支持されています。しかし補綴やインプラント用途ではデータオープン性でPrimescanに劣り(Alignは一部データ利用に制限がある場合があります)、操作性でも重量面のハンデがあります[49] 。したがって、 という住み分けがなされています。
Medit i500/i700シリーズ (韓国製・ヨシダ取り扱い): 近年急速にシェアを伸ばしている高コスパ機種 です。例えば「i500」は約250~300万円程度 という低価格ながら高精度・高速スキャンが可能で、「隠れファンも多い」と評される人気機種です[51] 。本体重量は約280g と非常に軽く、サイズも小さいため取り回しやすさは抜群 です[52] 。またソフトウェアのライセンス料やクラウド利用料も基本無料で維持費がほとんどかからない 点も魅力です[52] 。一方でPrimescanやTRIOSに比べるとスキャン精度・速度は若干劣る との報告もあり、大規模補綴ケースでの長期信頼性ではトップ機種に一歩譲る面があります。それでも日常診療レベルでは必要十分との評価が多く、「低コストでデジタル印象を始めたい」というユーザーには有力な選択肢です。Primescanとの差別化としては、Primescanがエンドツーエンドのサポートと卓越した性能を備えるプレミアム製品 なのに対し、Meditは必要機能に絞って導入障壁を下げたバリュー製品 と言えます。
その他の製品 : この他にもPlanmeca社のEmerald S(フィンランド製、約235gと軽量[53] )、Carestream社のCS3700(米国製、色調解析機能あり)、Dental Wings社のVirtuo Vivo(カナダ製、非常に軽量213g[54] )など様々なIOSが存在します。それぞれ重量・価格・機能のトレードオフ があり、例えばEmerald Sは軽量だがスキャン速度はトップ機種にやや劣る、CS3700は性能高いが国内販売体制が限定的、などの特徴があります[53] [55] 。その中でPrimescanの差別化ポイント を改めてまとめると、「卓越した精度・速度 (科学的検証でも実証)」「チェアサイド統合 (CERECによる即日補綴)」「将来拡張性 (様々な治療領域への対応)」の三点が挙げられます[1] [56] 。一方、弱点は「機器が大型・高価」である点ですが、これは性能とトレードオフでもあり、前述の通り運用工夫で十分カバー可能です。総じてPrimescanは最高峰の性能を求めるユーザー向けのフラグシップ機 であり、競合他社製品と比較しても遜色ないどころか多くの項目でリードしていると言えるでしょう[57] 。
4. この製品が向いているユーザー像(どんな医院・治療スタイルに合うか) Primescanは高性能ゆえに導入メリットを最大限活かせるユーザー に特に向いています。具体的には、以下のような医院・治療スタイルと親和性が高いでしょう。
即日治療(ワンビジット補綴)を提供したい医院 : CERECシステムを活用してその日のうちにセラミック修復物を提供する診療スタイルにおいて、Primescanは不可欠なピースです[4] 。高精度スキャンにより単一来院内で精密なクラウンやインレーを設計・切削できるため、患者満足度の向上や他院との差別化につながります。同時に即日治療を実現するにはドクターやスタッフに補綴デザイン・ミリングのスキルも要求されますが、Primescanの使いやすさと精度はそのハードルを下げてくれます。「患者を何度も通院させず迅速に治療を完了したい」という医院には理想的なツールと言えるでしょう。
補綴・インプラント症例が多い医院 : 常時多数の補綴物やインプラントの印象を取っている医院では、Primescan導入による効率化メリットが大きくなります。従来の印象採得に比べて時間短縮できるだけでなく、精度向上により補綴物の適合性が上がり調整や再作製の手間も減ります[25] 。特にインプラント治療ではアバットメントの角度や埋入位置を正確に記録でき、サージカルガイドやプロビジョナルの製作精度も向上します[3] 。こうした高度な補綴・外科処置 を頻繁に行う医院ほど、Primescanの性能をフルに活かせるでしょう。また技工所への依頼もデジタル化されるため、コミュニケーションエラーの減少や納期短縮といった副次的な効果も期待できます。
先進的なデジタル歯科医療を掲げる医院 : 患者へのアピールとして最新機器を導入し快適な治療環境を提供することを重視する医院にもPrimescanはマッチします。口腔内スキャナーを用いることで嘔吐反射の強い患者も負担が減り[58] 、リアルタイムに3D画像を見せながら説明することでインフォームドコンセントの質も向上します[59] 。特に予防歯科や長期メンテナンスに力を入れる医院では、定期検診ごとに口腔内をスキャン保存して経年的な咬耗や移動のモニタリング に活用するといった新しい試みも可能です。こうしたデジタルデータ活用型の歯科医療 を展開したい先進志向のドクターにとって、Primescanは強力な武器になるでしょう。
経営規模・投資余力のある医院 : 金銭面から見れば、やはりPrimescanはある程度の資金力や将来投資を見込める医院に向いています。保険診療主体でCAD/CAM冠程度しか使い道がない場合はROIが合わない懸念もありますが、自費補綴やインプラント・矯正など高付加価値治療を行う医院であれば投資回収も十分可能です。複数ドクターが在籍する医院や技工所併設の大型クリニックでは、一台導入するだけで院内ワークフロー全体のデジタル化が進み、生産性向上効果も高まります。また将来的に分院展開や大型化を考えている場合にも、一度デジタル化の流れを作っておくことでスケールメリットが得やすくなるでしょう。総じて「質の高い歯科医療を提供するための先行投資を惜しまない医院」 がPrimescanの恩恵を最大化できるユーザー像と言えます。
一方で、以下のようなケースでは慎重な判断が必要 かもしれません。すなわち「矯正治療だけを主に行っている(=iTero連携の恩恵が大きい)」「開業して間もなく資金に余裕がない」「スタッフが少なくデジタル機器の管理に手が回らない」といった医院です。そうした場合は、まずは低コスト機から導入して慣れてからステップアップする、あるいはラボと連携してデジタルフローの一部だけ活用する、といった段階的アプローチも選択肢に入るでしょう。Primescanは素晴らしい製品ですが万能ではありません ので、自院の診療内容・体制・経営計画に照らし合わせて適合度を見極めることが大切です。
5. 導入時の注意点(前提知識、導入コスト、運用条件など) Primescanを導入する際には、いくつか押さえておくべきポイント があります。まず前提知識・トレーニング についてです。デジタル印象には従来の印象採得とは異なるコツやノウハウがあり、装置に習熟するまで一定の学習曲線があります[60] 。メーカーや販売代理店によるハンズオントレーニングや講習会を必ず受講し、基本的なスキャンテクニックやソフト操作、データの扱い方を習得しておきましょう。特に複雑な症例(例えばブリッジの複数支台やオールオン4のような症例)ではスキャンパス(撮影順序) やアプローチ方法 が結果精度に影響します[61] 。Primescanの場合、推奨されるスキャンパスやコツがマニュアルや講習で提示されますので、それらメーカー推奨プロトコルに沿って使用 することが成功の鍵です[24] 。導入前にスタッフ間で操作手順をシミュレーションしておき、導入後もしばらくは練習用に模型や簡単な症例で繰り返し練習すると良いでしょう。
導入コスト については、初期費用だけでなく関連する周辺投資も検討しておきます。前述したように、ラップトップ型を選ぶ場合は高性能PCの用意 が必要ですし、チェアサイドミリングを行うなら別途ミリングマシンや焼成炉の購入費用、設置スペース、技工用具の準備が必要です[62] [63] 。またスキャナー先端チップは患者ごとに滅菌が必要なため予備チップを数本 用意する、スキャンデータを保管するためのストレージやバックアップ環境 を整備する、といった見落としがちなポイントにも投資が必要です。ソフトウェア面では、基本のスキャンソフト(Connect Software)は付属しますが、CEREC用設計ソフトや追加モジュール(インプラントデザインや矯正モジュールなど)を利用する場合は別途ライセンス契約が必要になることもあります。自院の使い方に合わせて必要なソフトウェア構成 を営業担当者と相談し、費用を算出しておきましょう。なお、医療用機器としての減価償却やリース活用など、会計・税務上のメリットも考慮して導入時期や資金計画を立てることをおすすめします。
運用条件・環境整備 についても注意が必要です。まず院内ネットワーク環境 のチェックです。Primescanで得た大容量データをクラウド送信するには安定した高速インターネット回線が望ましいため、Wi-Fi環境や有線LANの帯域を確認し、必要ならアップグレードしてください。特に院内LANで複数PCとデータ共有する場合はギガビット対応が推奨されます。またユニット周りのスペース確保 も重要です。カート型を導入する場合、診療チェア横にカートを置ける十分なスペースと動線を確保し、電源コンセント位置なども確認しましょう。ラップトップ型ならPCを置くカウンターや台を設置し、USBケーブルの取り回しに支障がないようにします。スキャナー使用時は口腔内を乾燥・明視野化 する必要があるため、アシスタントによるバキューム補助や適切な照明条件の下で行うように指導します。特に光学印象は唾液や出血に弱いので、必要に応じてラバーダムや開口器の使用、圧排コードの併用 といった事前準備も怠らないようにします。こうした環境面の配慮が、スムーズなスキャンと精度確保につながります。
導入後の運用フロー も計画しておきましょう。例えば、スキャン業務を歯科医師だけでなく衛生士や助手にも担当させるのか、取得データの整理・送信は誰が行うのか、といった役割分担 を決めておくとスムーズです[19] 。データは患者ごとに蓄積されるため、ファイル命名ルールやバックアップルーチンなどデータ管理体制 も整備します。万一ソフトの誤操作でデータを消去してしまった場合に備え、クラウド上にも履歴を残しておくか、定期的に外部ストレージへエクスポートする習慣をつけると安心です。また、Primescan本体のキャリブレーション(較正) は定期的に行う必要があります。付属のキャリブレーション用プレートを用いて、メーカー推奨の頻度(例えば数週間~数ヶ月に一度、ソフト上で指示が出ることもあります)で校正し、常にベストな精度で使用できるよう維持してください。
最後に、導入目的の明確化 も重要です。デジタルスキャナー導入は医院にとって大きな変化ですので、「何のために導入するのか」「成功指標をどう設定するか」をチームで共有しましょう。例えば「補綴物の再製作率を○%減らす」「印象採得時間を○分短縮する」「インビザライン症例数を年間○件増やす」など具体的目標を設定し、定期的に効果を検証します。もし目標未達ならばスキャン方法の改善やスタッフ再トレーニング、あるいは活用できていない機能がないかを見直すことで、投資効果を最大化できます。Primescanは適切に運用して初めて真価を発揮するツール です。その性能に頼り切るのではなく、医院全体でデジタルワークフローを育てていく姿勢が、導入成功のポイントと言えるでしょう。
以上、Dentsply Sirona社「Primescan」の製品概要から各評価ポイント、競合比較、適合ユーザー像、導入時の注意事項まで詳しく解説しました。高性能ゆえに導入ハードルも高いPrimescanですが、得られるメリットも非常に大きく、デジタルデンティストリーをリードする存在です。その投資価値を十分理解した上で検討し、導入の際には本レビューのポイントをご参考いただければ幸いです。
参考文献・出典 : 本レビュー内の情報はメーカー公式資料や学術文献、ユーザーの報告など信頼性の高いソースに基づいてまとめています[1] [8] [18] [41] 。各引用箇所に示した番号付きの参照をご確認いただくことで、詳細情報や原典に当たることができます。Primescanに関するさらなる技術仕様や最新情報はメーカーの公式サイト[16] や販売代理店の資料などをご参照ください。デジタル機器は日進月歩で進化していますので、常に最新の動向にもアンテナを張りつつ、自院に最適な選択をしていただければと思います。
[1] [7] 〖新製品紹介〗 口腔内スキャナー「Primescan(プライムスキャン)」 | Doctorbook academy (ドクターブックアカデミー)
[16] [17] Primescan(プライムスキャン) -デンツプライシロナ株式会社- | Doctorbook academy (ドクターブックアカデミー)
[28] [41] [58] [60] Digital intraoral scanner devices: a validation study based on common evaluation criteria | BMC Oral Health | Full Text
[45] [46][47] Cerec Primescan, Primemill and Speedfire thoughts? : r/Dentistry
矯正中心ならiTero、総合的なデジタル診療用途ならPrimescan