プロテーパー アルティメットプロテーパー アルティメット
デンツプライシロナ株式会社
評価なし
【1. 製品概要】
プロテーパー アルティメットは、デンツプライシロナ社が2021年に発表したニッケルチタン製の根管形成用ロータリーファイルシステムです[1]。従来のProTaper UniversalやProTaper Goldのコンセプトを継承しつつ、各ファイルに個別の熱処理(M-wire、Gold-wire、Blue-wire)を施すことで柔軟性と耐久性を高め、手技の簡素化も実現した”プロテーパーブランド”の最新モデルです[2][3]。スライダー (Slider)・シェイパー (Shaper)・フィニッシャー (Finisher)という3ステップの専用シークエンスを採用し、前歯から大臼歯まで様々な根管の解剖学的形態に対応できる包括的な根管治療ソリューションとなっています[4]。主に根管治療時の根管拡大・形成に使用し、難度の高い湾曲根管や細い根管でも、柔軟性に優れたファイルが滑らかに追従して拡大を行える設計です[5]。また、根管洗浄用器具や専用ガッタパーチャポイント、シーラー(封鎖材)まで含めて一貫連携するシステムとなっており、根管形成から洗浄・根管充填までシームレスなワークフローをサポートします。
【2. 評価軸レビュー】
- 操作性:
従来のProTaperシリーズ(UniversalやGold)と比べてファイル本数が精選されており、S1/S2の2本だった初期拡大がシェイパー1本に統合されるなどシークエンスが簡略化されています[8]。全ファイル共通で400rpm・4~5.2Ncmの設定で使用できるためモーター設定もシンプルです[9]。ファイルのカラーコードはProTaper従来品に準じた配色ですが、ISO規格色とのずれ(例えばスライダーは紫ハンドルだが#16相当、シェイパーは白だが#20相当)があり、初めて使用する際は注意が必要です[10]。操作時の感触としては熱処理NiTiによる高い柔軟性と切削効率を両立しており、湾曲根管内でもスムーズに作業長まで達しやすい一方、ファイル本数が多いためにこまめな洗浄とリキャピチュレーション(再疎通)が必要でテクニックは煩雑との指摘もあります[11]。海外KOLは「多くの症例でハンドKファイルを使わず直接スライダーからグライドパスを開始できる」と評価していますが、日本国内では安全のためKファイルで予備的な疎通を行ってから用いることが推奨されています[12]。総じて、習熟には基本的なNiTiファイル操作の知識が求められますが、適切に使えば操作性は良好で予知性高く根管形成できるとの評価が得られています[13]。
症例適応:
広範な症例に対応しうる汎用性が本製品の大きな特徴です。公式には「様々な解剖学的根管形態に対応する」ことが謳われており[14]、実際、従来より30%以上柔軟性が向上したFinisher(F2)ファイルにより、より強い湾曲や細い根管にも追従できるため、これまでより難易度の高い湾曲・細径根管症例にも対応可能です[5]。一方で、標準のフィニッシャーは最大で#30/.09までの拡大に留まる設計であり、感染根管などでそれ以上の拡大が必要なケースでは、別売の大径ファイル(#35/.12、#50/.10のAuxiliary Finisher)を使用する選択肢があります[15]。しかしこれらの補助ファイルはテーパーが非常に大きく扱いが難しいため、「#30を超える拡大が必要な場面は臨床的にほとんどなく、本システムは実質#30程度までの最小限の削除量で対応するコンセプト(MIエンド)ではないか」との専門医の声もあります[16][17]。以上より、初回根管治療(Initial RCT)において歯質を削りすぎず必要十分な拡大と清掃性を両立したいケースに適し、再根管治療で大きなガッターパーチャ除去・根管拡大が求められる症例では他の器具と併用・代替する判断も必要でしょう[18]。
連携性:
プロテーパー アルティメットは単体のファイル製品というより、根管充填材や洗浄器具まで含めたトータルソリューションとして設計されています。例えば、根管形成後の充填に用いるConform Fit®ガッタパーチャポイントおよびペーパーポイントは、アルティメットのフィニッシャーで形成された可変テーパーの根管形態に精密に適合するよう射出成型されており、初回の試適でぴったりとタッグバック(適度な引き抵抗)を得られるため充填作業が効率化できます[19][20]。また、同社の根管洗浄用ニードル(メルファー洗浄針)や超音波アクチベータ(SmartLite Pro EndoActivator)との組み合わせにより、湾曲根管の先端部まで洗浄液を行き渡らせ、側枝や微細管の洗浄・封鎖効果を高めることが可能です[21]。システム全体としてファイル→洗浄→充填がシームレスに連携するよう設計されており、特にシングルポイントテクニックと生体親和性シーラー(例:AHプラス バイオセラミックシーラー)の併用により高い予知性で根管充填まで完結できる点が特徴です[22][23]。モーターについては特殊な機器を必要とせず、市販の根管治療用モーター(トルク調節可能なロータリーモーター)で使用可能です(※ReciprocやWaveOneのようなレシプロ専用モードは不要)。なお、ファイルは全て滅菌済みシングルユース形態で提供されるため、使い回しによる院内感染リスクを低減しつつ、HyFlex EDMなどと同様に開封直後から清潔な器具で治療を行える点も連携面(院内フロー)でメリットと言えるでしょう[22]。
価格帯・コスト:
プロテーパー アルティメットは最先端の材料技術を投入したプレミアムクラスの製品であり、ファイル1本あたりの単価は従来品より高価です[24]。日本国内でも2022年の発売当初、1症例用アソートセット(スライダー~F3の5本組)が数千円台後半で提供されており、例えば廉価な汎用NiTiファイルや手用ステンレスファイルと比べると明らかにコスト高です(※具体的価格は販社により異なる)。さらに本システムは基本的に患者ごとに使い捨て(単回使用)する運用が推奨されているため、再利用前提の器具よりもランニングコストは上がります。もっとも、滅菌コストの削減や根管治療の成功率向上による再治療リスク低減など間接的メリットも考慮すれば、妥当と評価する声もあります。総じて、本製品は「質に見合ったコスト」の製品ですが、医院の保険・自費診療バランスや患者さんへの費用説明なども踏まえて導入判断する必要があります。
品質・耐久性:
本製品は品質面でも信頼性の高いDentsply Sironaブランドのもとで製造されており、素材は高純度のニッケルチタン合金製、シャンク部は金メッキ処理されています[25][26]。各ファイルに最適化された熱処理によりサイクル疲労耐性(折れにくさ)や耐久性が向上しており、メーカーによればProTaper Gold F2と比較してProTaper Ultimate F2は柔軟性・耐疲労性がそれぞれ約30%高く、安全性が強化されています[5][3]。実際、近年の研究でもUltimateは旧世代のProTaper Goldより連続回転下での折損耐久時間(TTF)や破断サイクル数(NCF)が有意に長いとの結果が報告されており[27]、耐久性向上が客観的に示されています。切削性能についても、各ファイルの断面形状やテーパー設計が工夫されており、シェイパーは根管上部2/3のデブリ除去能力に優れ、フィニッシャーは根尖部でも捻れ変形(アンワインディング)しにくく折損リスクが低減しています[28]。とはいえNi-Tiファイル特有の過負荷時の破折リスクはゼロではないため、メーカー推奨のトルク値内で使用し、強い抵抗を感じたら無理に進めないといった基本的注意は必要です。総合的に、本製品の品質・耐久性は現行製品の中でもトップクラスであり、安心して使用できる水準にあると言えます[29]。
ユーザーの声:
プロテーパー アルティメットに対するユーザー評価は概ね好意的ですが、長所・短所の両面が指摘されています。実際に使用した歯内療法専門医のコメントでは、「最終的に#30/.09まで6本のNiTiファイルを使う必要があり、術式が煩雑」「#30以上に拡大しようとするとテーパーが大き過ぎて現実的でない」など、手技の多段階ぶりや対応できる根尖サイズの限界について懸念が挙げられています[11][16]。一方で「歯質の削除量を極力少なくした形で必要最低限の拡大が行える」「最終ファイルのテーパーが大きいおかげで、市販の太めのガッタポイント(#30/.06など)1本でシングルポイント充填が可能になり手技が簡便」といったポジティブな評価もあります[17][22]。実際、特殊な可変テーパー設計によりガッタパーチャポイントが初回試適でぴったり適合しやすいことや[19]、各ファイルが滅菌包装され清潔に使用できる点は現場のドクターからも好評です[22]。ベテラン歯科医のブログでは「昔から使い慣れたデンツプライのNiTiファイルは安心感がある。最新技術が投入された高価なファイルだが、特に大径ファイルの形状が理想的だ」という声もあり[30]、従来からの愛用者にとっては満足度の高いアップグレードと言えるでしょう。総じて、ユーザーの声から浮かび上がるのは、「予知性の高い根管形成が可能になる一方、システムを使いこなすには適切な手順遵守が不可欠」という点であり、適合症例を見極め正しく使えば非常に有用なツールとの評価が多数を占めています。
【3. 類似製品との違い・優位性】
プロテーパー アルティメットは、他社や他シリーズのNiTiファイルシステムと比べていくつか際立った特徴があります。まずVDW社のレシプロックブルー(Reciproc Blue)やデンツプライ社のウェーブワンゴールド(WaveOne Gold)との比較では、これらがレシプロ(往復)運動によるシングルファイル方式なのに対し、アルティメットは連続回転によるマルチファイル方式である点が大きな相違です。レシプロ方式は1本で根管形成を完結できる手軽さが魅力ですが、根管内に削片が残留しやすい・複雑な根管形態への適応に限界があるという指摘があります[31]。一方、アルティメットは複数ファイルで段階的に形成する分、より原形に忠実で綿密な形成が可能で、複雑な2重湾曲模型で比較してもReciproc Blueより中心性の高い形成が得られたとの報告もあります[32](※一般論として)。WaveOne Goldはシンプルなレシプロシステムとして汎用されていますが、そのテーパー形状はProTaper系以上にアグレッシブで歯質削除量が多めとの評価があり、アルティメットは「その欠点を改善している」との声もあります[33]。実際、ProTaper Gold使用者からは「太い頚部テーパーに罪悪感を感じていたが、Ultimateは頚部デンティンの切削が抑えられている」といった意見もあり[34]、深い根尖部拡大(Deep Shape)と歯質保存(MI)の両立を図った設計思想は他にない特徴です[35]。
またコルテン社のHyFlexシリーズとの比較では、HyFlex CMやEDMがニッケルチタンの形状記憶を抑えた柔軟性を売りに、湾曲根管への追従性や手指でのプリベンディング(事前湾曲付与)を可能にしている点が注目されます。アルティメットもGoldやBlueの熱処理技術により高い柔軟性を持ちますが[5]、完全に塑性変形可能なHyFlex CMほどではなく、基本的には自然な弾性変形で根管に追従させる運用となります。一方で耐久性に関しては、HyFlex EDMが非常に高いサイクル疲労耐性を持つことが知られるものの、アルティメットも独自の熱処理と断面形状によりProTaper系として最高クラスの強度を誇ります[36]。さらにアルティメットは各ファイルごとに異なる熱処理技術(M-wire/Gold/Blue)を組み合わせた世界初のシステムであり[2]、ファイルごとに素材特性を最適化して役割を分担させる設計は他社製品に見られない差別化ポイントです。例えば、スライダーにはしなやかさ重視のM-Wire、シェイパー・フィニッシャーには切削効率と柔軟性のバランスが良いゴールドワイヤー、大径フィニッシャーには剛性と耐久性の高いブルーワイヤーといった具合に、1つのシステムで複数種のNiTi素材を使い分けているのはアルティメットならではです[37]。
その他の類似製品として、同社のTruNatomyやV-Taperシリーズなど低侵襲性を謳うシステムとの比較では、アルティメットはProTaper譲りの可変テーパー形状による十分な根尖部拡大(Deep Shape)が特徴となります[38]。TruNatomyが細径・極小テーパーで歯質保存に重点を置くのに対し、アルティメットは根尖部のボリュームを#25/08や#30/09までしっかり広げることで洗浄効果と充填の確実性を高める方針です[39]。そのため、徹底した洗浄・封鎖を重視する臨床家にはアルティメット、極力削らない保存重視ならTruNatomyやHyFlexといった住み分けになるでしょう。総じて、プロテーパー アルティメットは「幅広い症例適応」「高度な熱処理技術の融合」「システム連携の充実」といった点で他製品に優位性があり、特に従来のProTaperユーザーにとっては操作感を維持しつつ最新技術の恩恵を受けられるアップグレードになっています。
【4. 向いているユーザー像】
プロテーパー アルティメットは、根管治療の質を重視する歯科医院や歯内療法に熱心な臨床家に適した製品です。具体的には、日常的に前歯から大臼歯まで幅広い根管治療を行っており、NiTiロータリーファイルの使用経験がある一般開業医が本システムの恩恵を享受しやすいでしょう。従来ProTaper GoldやWaveOneなどデンツプライ製ファイルを使っていた医院であれば、ほぼ同じ手技体系でアップグレードできるため導入もスムーズです。特に初回根管治療の成功率向上を図りたい医院には有用で、深い洗浄と的確な単一ポイント根充により再治療リスクを下げられる点がメリットとなります[18]。一方、保険診療主体でコスト重視の診療スタイルや、短時間・簡易な根管形成(例:レシプロ1本で迅速に終える)の志向が強い場合には、アルティメットの多ステップ手技は必ずしもフィットしないかもしれません。どちらかといえば「根管治療に十分な時間とコストを割いてでも良い結果を出したい」というスタンスのユーザーに向いており、マイクロスコープやラバーダムを活用するような先進的なエンド治療を実践するクリニックで真価を発揮する製品と言えます。さらに、大学病院や専門医療機関で難症例に対応する際にも、豊富なラインナップと高い信頼性から選択肢に入るでしょう。総じて、プロテーパー アルティメットは「予知性の高い根管形成で患者・術者双方の負担軽減を図りたい」という医院・術者像に合致する製品です[40]。
【5. 導入時の注意点】
プロテーパー アルティメットを導入するにあたってはいくつか留意すべきポイントがあります。まず事前知識・トレーニングとして、従来のNiTiファイルシステム(特にProTaper系)に準じたテクニックではありますが、新たなシークエンス(スライダー→シェイパー→各種フィニッシャー)の使い分けを習熟する必要があります。メーカー提供のテクニックガイドやHands-onセミナーを活用し、各ファイルの役割や推奨動作(挿入ストロークやリトリートの頻度など)を理解しておくと安全に運用できます。また、必要な機材の準備として、ロータリーファイル用モーターは400rpm・5Ncm前後のトルクに設定できる機種を用意します[9](市販のエンドモーターの多くは対応可)。レシプロ専用機能は不要ですが、トルクコントロールとオートリバース機能は安全のため有効に活用してください。導入初期には、出来るだけまっすぐで単純な根管から症例選択し、感覚を掴んでから湾曲や難症例に適用すると良いでしょう。特にスライダーについて、海外では#10Kファイルなしで直接グライドパス形成を開始する例もありますが、日本ではまず#10程度のステンレスKファイルで根尖まで予備的に疎通をとってからNiTiに移行するのが無難です[12]。こうすることでファイル破折やステップ形成のリスクを下げられます。
次に導入コストとランニングコストです。前述の通り本製品は高価なシステムであり、初回購入時にはある程度まとめて各種ファイルや対応ポイント類を揃える必要があります。例えばスターターキット(アソートファイル各種やペーパーポイント、ガッタパーチャポイント等のセット)が用意されているので[41]、それを活用して不足なく準備しましょう。ランニングコスト面では基本的に症例ごとに新品を使用する前提で計画します。滅菌済ディスポーザブル設計のため、使用後の再滅菌・再使用はメーカー非推奨です(繰り返し使えば疲労破折のリスクが高まります)。ただしコスト圧迫によりやむを得ず再使用する場合でも、患者ごとに新品のスライダーやフィニッシャーF1を使うなど負荷の大きいファイルは使い回さない工夫が望ましいでしょう。
さらに運用条件・手技上の注意として、根管内のこまめな洗浄とパテencyの確保が挙げられます。アルティメットは切削効率が高くデブリが根管内に溜まりやすいため、各ファイルで数回カットしたら一度リーマーや細いKファイルで根尖まで再疎通し、次亜塩素酸などでフラッシングする手順を怠らないようにします[11]。特にテーパーの大きなフィニッシャーを根尖付近で回転させる際は、デブリ圧詰まりによる根尖部の圧力上昇(痛みや飛び出し事故)を防ぐためにも、1本ごとに十分な洗浄・吸引を行ってください。破折対策としては、フィニッシャーが根管内で過度な応力を受けないよう、必要以上に押し込まない・カーブがきつい時はストロークを短くして無理に根尖長を超えない、など基本的事項を守ります。万一ファイルが根管内で破折した場合、ProTaper用の除去システム(例えばデンツプライ社のファイルリムーバルシステム)や超音波チップでの振動除去など高度な対応が必要になるため、そもそも折れないよう違和感を感じたら早めにファイル交換する習慣が重要です。
最後に周辺資材と臨床フローです。アルティメットを導入するなら、できれば専用のConform Fitガッタパーチャポイントやペーパーポイントも合わせて用意しましょう[42]。これらを使うことで本システム本来の効率(初回での適合や迅速な乾燥)が得られます。また、アルティメットのDeep Shapeで形成された根管形態はシングルポイント充填に適していますので、シーラーは流動性・封鎖性の高いもの(例:AHプラスや今後発売の生体セラミック系シーラー)を使用すると良い結果が得やすいです[22]。もちろん加熱ガッタでの垂直加圧充填も可能ですが、深いテーパーを活かしやすいシングルポイント法との相性が特に良好です。術後は使い捨てたファイルの破損有無を確認し、カルテにどのサイズまで拡大したか(例:「Ultimate F2まで使用」等)を記録しておくと、万一再治療になった場合にも対応しやすくなります。以上の点に注意して導入すれば、プロテーパー アルティメットは日常臨床において強力な武器となり、より予後の良い根管治療に貢献してくれるでしょう。
[2][35] ProTaper Ultimet(プロテーパー・アルティメット) | 九州デンタルショー2022
[8][37] Invention: ProTaper Ultimate Rotary File System | Advanced Endodontics
[24][30] ProTaper Ultimate(プロテーパー アルティメット)を使ってみた
[27][36] Assessment of the Cyclic Fatigue Performance of the Novel Protaper Ultimate File System Used in Different Kinematics: An In Vitro Study
[32] Comparative study of the shaping capacity obtained with the ...
[40] [PDF] プロテーパー・アルティメットが - 株式会社トミヤ 歯科医療専門商社