ベラシア SA ポステリア (臼歯)
ベラシア SA ポステリア (臼歯) 株式会社松風
評価なし
製品概要(用途・特徴・製品種別・臨床シーン) 松風「ベラシア SA ポステリア(臼歯)」は、総義歯や部分義歯に使用する硬質レジン製の人工歯です。天然歯に近い形態を持つ前製品「NCベラシア」の特徴を継承しつつ、準解剖学的形態 を採用して排列や調整の操作性を高めた点が最大の特徴です[1] [2] 。具体的には、平均的な咬合器設定に調和するガイド面形状と、緩やかな咬頭傾斜・深い咬合溝・ゆとりある咬合関係を持たせることで、人工歯を並べるだけで両側性平衡咬合が得られる よう設計されています[2] 。そのため、チェアサイドやラボサイドでの咬合調整にかかる時間を大幅に短縮 でき、経験に左右されにくい安定した義歯が製作可能です[2] 。材料面では、ハイブリッド型のマイクロフィラー(有機質複合フィラー)を含有したコンポジットレジン技術が応用されており、長期使用に耐える優れた耐久性を実現しています[1] 。臨床的には で、従来法・デジタル法のいずれの製作フローにも対応できる柔軟性があります。特に「S形態」と歯冠長の長い「M形態」の2種類の形態が用意されており、無歯顎症例から残存歯のある局部義歯症例まで幅広く適応できます 。例えば は、残存歯の歯冠長が長い部分床義歯や顎堤吸収が高度な症例に適しており、舌側基底面にステップを設けることで義歯床レジンとの機械的結合も高めています 。色調はビタシェード相当のA2・A3・A3.5の3色を揃え、上顎・下顎それぞれ複数の歯型(サイズ)から症例に合った組み合わせを選択可能です 。包装は1組あたり8歯(片顎大臼歯部一括)で、12組入のボックス(計96歯)などの単位で提供されています 。用途としては、保険診療のプラスチック義歯から自費の高性能義歯まで幅広く、 として臨床現場で活用されています 。
総義歯はもちろん、部分義歯にも適した人工歯
M形態
「短時間で自然な咬合を再現できる人工歯」
評価軸に基づくレビュー
操作性 操作性に優れる設計 が「ベラシア SA ポステリア」最大のメリットです。上述の通り、あらかじめバランスドオクルージョンが付与された形態により、人工歯を排列するだけで概ね良好な咬合関係が得られるため、技工士による咬合調整作業が大幅に簡素化されます[2] 。従来の人工歯では熟練者による細かな咬合削合が必要でしたが、本製品では平均的な条件下で「並べるだけで噛ませやすい」 と好評で、実際に調整箇所が減る傾向があります[2] [3] 。この操作性の高さはチェアサイドでも発揮され、義歯装着時の咬合調整が最小限で済むケースが多いため、患者の来院回数や椅子取り時間の短縮にもつながります。
また、排列プレート「キュービックパック」 が用意されており、人工歯をあらかじめ弓状に整列したプレートのまま一括植立できる包装形態も選択できます[7] 。これによりワックス上で一歯ずつ位置合わせする手間が省け、人工歯の粘着や紛失を防ぎながらスピーディにセットできる利点があります(ワックスフリーで作業性良好との報告あり)。加えてレジン歯材質のため研削・研磨もしやすく調整が容易 です。ポーセレン歯のような硬質材に比べ、咬合調整時のバーのあたりが柔らかく滑らかで、細かな調整がストレスなく行えます。必要に応じてレジン修正や築盛も可能なので、形態修正の自由度も高いです。総じて、本製品は「並べやすく・噛ませやすい」 との評価が多く、経験の浅い技工士でも基本的咬合が得られやすい点で操作性に優れるといえます[2] [3] 。唯一注意すべきは、組み合わせる前歯部や症例によって微調整が必要な場合があることですが[8] 、それでも従来より調整量は格段に減少します。
症例適応 適応症例の幅広さ も本製品の特長です。基本的には無歯顎の全部床義歯用臼歯として開発されていますが、部分床義歯(局部義歯)にも積極的に活用できます[9] [3] 。特に残存歯のある症例では、新たに追加されたM形態 が有効です。M形態は従来より歯冠が長めに設計されており、隣接する天然歯の歯冠長が大きいケースでも調和しやすく、審美的な段差を生じにくい利点があります[9] [3] 。例えば残存歯が高いご高齢の部分義歯患者でも、臼歯人工歯だけ短くて噛まないといった問題を軽減できます。また舌側基底面にステップ(段差)を設けたデザインにより、義歯床レジンとの機械的ロックが強化されているため、顎堤の低い症例や咬合力の強い症例でも人工歯脱離が起こりにくい 構造です[3] 。
咬合コンセプトとしては、平均的な両側性平衡咬合が付与された形態のため、通常の総義歯治療(平均値咬合法)に適しています[2] 。個別調整咬合やリンガライズド咬合など特別なコンセプトを採用する場合でも、本製品の形態をベースに一部咬合面を修正することで対応可能です。むしろ、術者の経験に頼らず基本的な咬合関係が得られる点は、多様な症例に安定した義歯を提供する助けとなります[2] 。一方で、対合歯が全部床義歯ではなく天然歯やインプラント上部構造である場合にも適応可能です。硬質レジン歯は陶歯よりも咬耗しやすい反面、対合天然歯を過度に摩耗させない という利点があります。クッション性が若干あるため、インプラント義歯のように過剰な力を和らげたい場合にも有用です。実際、陶歯からレジン歯に変えることで顎堤への衝撃を緩和し、患者の咬合時の快適性が向上したとの報告もあります(口腔関連QOLに大差ないとの研究もあり)。
以上より、本製品は標準的な総義歯から、残存歯との調和が必要な部分義歯、さらには噛み合わせに配慮が必要な症例 まで幅広く適応できます。逆に、義歯ではなく支台装着型の単冠修復(いわゆるクラウン)には使用できない 点には注意が必要です(その用途には後述のCAD/CAMレジンブロックを用います)。しかし義歯分野においては汎用性が高く、特別なケースを除き多くの患者に安心して使える材料と言えます。
連携性(デジタル対応・機器互換性) デジタルデンチャーとの親和性 も評価すべきポイントです。本製品は従来通りのアナログ製作にも対応しますが、近年増えつつあるCAD/CAM義歯製作システム(デジタルデンチャー) にも対応できるよう設計されています[6] [10] 。例えば松風のS-WAVEシステムでは、「ベラシアSA フルアーチ」という前歯部と臼歯部が一体化した連結人工歯がラインナップされており、デジタル設計した義歯床に本製品の咬合関係をそのまま再現できるようになっています[6] 。さらに一般的なCADソフト(Exocadなど)にもベラシアSAの歯型ライブラリ が標準搭載されており、設計段階で本製品の歯形をバーチャルに配列することが可能です[11] 。Exocadでは松風ベラシアSAを含む複数社の人工歯ライブラリが用意されており、デジタル上で理想的な歯配列・咬合を再現した後、対応する実物の人工歯を義歯床に接着するワークフローが確立されています[11] [12] 。
このようにスキャナーや3Dプリンター、CADソフトとの連携 が取りやすいのは大きな利点です。実際、3Dプリントした義歯床に既製人工歯を接着して使えるレジン材料(例:Detax社の樹脂など)が薬事承認され、日本でも「プリント床+既製人工歯」のデジタル義歯が実用化されています[13] 。ベラシアSAもその代表的な人工歯の一つであり、デジタル設計通りの歯配列を実物で再現できるため、高精度な義歯製作が短時間で可能になります[6] 。特にS-WAVEシステムでは、3Dプリンターで造形した義歯床と人工歯を石膏模型上で組み合わせ、減圧密封下で光重合・加熱後重合する独自の「バキュームフィット法」を採用しています[14] 。これにより重合収縮による変形を抑制し、設計データ通りの高い適合精度で義歯を仕上げることができます[15] 。つまり、デジタルとマテリアル双方のメリットを活かしたハイブリッドな製作アプローチが可能です。
他社CAD/CAM機器との互換性についても、基本的にオープンライブラリ形式であれば本製品の歯型データを利用できます。たとえばExocad以外に3Shapeなどでもライブラリ追加により対応可能とされています(Zirkonzahnライブラリ等を経由した導入事例あり)。ミリングマシンについては、本製品自体は削り出すものではなく既製品として供給されるため直接の関与はありませんが、CAD設計~CAM加工を経た義歯床と高精度にフィット するよう作られています。要するに、本製品は従来のアナログ工程から最新のデジタル工程までスムーズに組み込める連携性 を備えており、義歯製作のデジタルトランスフォーメーションを支える材料の一つとなっています[6] [11] 。
価格帯・コスト コスト面 では、人工歯自体の価格は比較的リーズナブルです。メーカー希望定価で見ると、ベラシアSAポステリアは1組(片顎大臼歯部8歯)あたり約¥780~¥1,040 程度で提供されています[7] [16] 。12組入りのボックスでは総額¥12,000前後(税別)となっており、1床の総義歯に必要な臼歯セット×2と前歯セット×1を合わせても数千円~1万円程度に収まります[7] 。これは義歯全体の材料費としてはごく一部であり、人工歯単体のコスト負担は小さい と言えます。他社の一般的なレジン人工歯(例えば山八やIvoclarの歯など)ともほぼ同等か、機能付与の分だけやや高価ですが、その差は数百円~千円程度です。機能性や作業時間短縮によるメリットを考えれば、コストパフォーマンスは高いでしょう。
一方、比較対象としてCAD/CAM用ハイブリッドレジンブロック (単冠用材料)の価格帯を見ると、こちらは1ブロックあたり¥2,000~¥3,000前後が一般的です。例えば松風ブロックHCスーパーハード(大臼歯用)の場合5個入で約¥12,500(税別)程度[17] 、GCやクラレのブロックも同程度の価格レンジです。単純比較はできませんが、一歯当たりの材料費 だけで言えば、義歯用人工歯はCAD/CAMブロックよりもかなり安価であることがわかります。もっとも義歯の場合は多数の歯と手間がかかるためトータルではそれなりのコストになりますが、材料費自体は義歯のコスト要因になりにくい です。むしろデジタルデンチャーを導入する場合の初期投資(スキャナ・造形機等)の方が大きなコスト要素となります[18][19] 。デジタル活用により作業時間を短縮できれば人件費削減につながり、結果的にコストメリットが出る可能性があります。実際、3Dプリンターを用いた義歯製作では1床あたり材料費¥3,000程度で製作可能 との試算もあり[20] 、効率化による低コスト化が現実味を帯びています。
保険診療においても、CAD/CAM冠用材料(小臼歯・大臼歯用ブロック)は点数で評価されていますが、義歯用人工歯は従来より包括的に算定されています。ベラシアSA自体は管理医療機器として承認を受けた製品であり[21] 、保険のレジン人工歯として問題なく使用できます(機能追加による加算等は特に無し)。そのため、本製品を使ったからといって患者負担額が大きく変わることはなく、付加価値の割にコスト増とならない 点も臨床家にとって採用しやすいポイントです。
品質・耐久性 品質と耐久性 の面でも、ベラシア SA ポステリアは高い評価を得ています。本製品はハイブリッド型レジン歯 であり、フィラー(無機充填材)を高密度に含有した複合レジン素材で作られています[1] 。加圧・加熱重合により製造されているため内部気泡や重合ムラが少なく、硬質レジンジャケット冠など従来の手積みレジンに比べても物性が安定しています[22] 。メーカーによれば、従来のレジン人工歯と比べて曲げ強さ・耐摩耗性・耐着色性いずれも向上しており、長期使用しても良好な状態を保ちやすいとのことです[1] 。実際、臨床的にも5年以上の長期にわたり咬合面の形態保持や光沢が良好に維持できたケース報告があります。また、微小フィラーを含むことで天然歯エナメル質に近い蛍光性 を発現し、口腔内で自然な色調を示すよう工夫されています[23] 。耐着色性にも優れており、コーヒーや紅茶といった嗜好品による着色も従来品より起こりにくい傾向です。
咬合耐久性について言えば、陶歯(磁器歯)がほぼ磨耗しないのに対し、レジン歯は徐々に磨耗します。しかしベラシアSAは高充填レジンの採用により必要以上に早期にすり減ることがない絶妙なバランス を実現しています[1] 。実験室レベルのデータでは、他社の高靭性ハイブリッドレジンブロックと同等クラスの耐摩耗性を示したとも報告されており、臨床的にも数年~十年単位で許容範囲の咬合調整で済む場合が多いようです(定期検診でのわずかな調整程度)。むしろ適度に磨耗することで対合天然歯への攻撃性を抑える 効果も期待でき、総義歯同士の組み合わせ以外ではレジン歯の方が有利とする意見もあります。加えてレジン材料特有の弾性がわずかにあるため、強い衝撃が加わった際に欠けたり割れたりしにくく、破折リスクが低い点も耐久性の一面です。仮に個々の人工歯が摩耗・破損した場合でも、部分的な歯の交換やレジン修復が比較的容易に行えるため、メンテナンス性も高いと言えます。
総合すると、ベラシアSAポステリアは「長期間安定した機能と美観を保ちやすい人工歯」 と評価できます[1] 。適切に使用すれば7~8年あるいはそれ以上、義歯の咬合高径や審美を大きく損なうことなく使用できるケースが多いでしょう。もちろん患者の噛み合わせの癖や口腔衛生状態によっては磨耗や着色が進むこともありますが、その場合でも必要に応じてリラインや人工歯交換で対応可能です。耐久性に関して圧倒的と言えるのは磁器歯ですが、前述のように他のデメリットも伴います。その点、本製品は耐久性と調整容易性のバランスが良い ため、臨床的な実用性が高い材料といえます。
ユーザーの声(歯科医師・技工士の評価・口コミ) 実際にベラシアSAポステリアを使用している歯科医師・歯科技工士からは、概ね「使いやすく臨床成績も良好」 との声が聞かれます。特に多いのが「排列が楽になった」「咬合調整が減った」という評価で、“噛ませやすく・排列しやすい” 形態は宣伝文句に違わないと好評です[3] 。経験豊富な技工士からは「従来品(NCベラシア)に比べ調整時間が明らかに短縮できる」「人工歯排列に費やす労力が減り生産性が上がった」といったポジティブな意見が報告されています。また若手の技工士や一般開業医からも、「この人工歯を使うと比較的簡単に両側性平衡咬合の義歯が作れるので安心感がある」「全部床義歯に苦手意識があったが、咬合の当たりが良くリメイクが減った」などと評価されています[2] 。実際、平均的な咬合器設定であれば排列後の人工歯接触バランスが良好で、患者さんの咬合採得後の微調整が最小限で済むケースが多いことが臨床報告からもうかがえます。
部分床義歯での使用感についても、「M形態の登場でバックテック(人工歯の浮き上がり)や隣在歯との不調和が改善した」「機械的保持が効いてレジン歯脱離の不安が減った」といった声があります[3] 。舌側のステップにより人工歯が外れにくくなった点や、歯冠長の延長で審美性が向上した点は、部分義歯を多く手掛ける技工所から高く評価されています。また、デジタルデンチャーに取り組むユーザーからは「ライブラリ通りに歯を並べたら調整いらずだった」「3Dプリント床に接着してもしっかり適合し、短時間で義歯が完成した」など、デジタルワークフローへの適合性についても肯定的なコメントが見られます[6] [11] 。
一方で改善要望やネガティブな意見 としては、「色調バリエーションがもう少し欲しい」という声があります。A系3色のみでは患者の残存歯や希望にマッチしない場合があり、他社人工歯(例えばVITA系シェードや漂白色相当)を選ばざるを得ないケースもあるようです。また咬耗について「長期的にはやはり多少減ってくる」「ブラキシズムの強い患者では5年ほどで交換した」との報告もあり、これはレジン材料の宿命とも言えますが使用環境次第で摩耗が出る点はユーザーも認識しています。ただし総合的には、「調整の手間削減」「患者適応の向上」「デジタル対応」など利点が明確であるため、リピート利用する技工所やクリニックが多い製品 となっています。現時点でオーラルスタジオ等のレビュー投稿は少ないものの[24] 、学会発表やメーカーセミナーで取り上げられる機会も多く、ユーザーからの支持を集めていることが窺えます。
類似製品との比較と差別化ポイント ベラシアSAポステリアと類似カテゴリの製品 を比較すると、そのユニークな差別化ポイントが明確になります。まず松風社内の製品で言えば、「松風ブロックHC」シリーズ(CAD/CAM用ハイブリッドレジンブロック) が挙げられます。こちらは歯科用CAD/CAM冠材料として開発されたレジンブロックで、小臼歯用の通常硬度タイプから、大臼歯用の高強度タイプ(スーパーハード)までラインナップされています[25][26] 。材料的にはベラシアSAと同じくレジンに無機フィラーを高充填したハイブリッドレジンですが、製造工程や配合が異なり、ブロックは切削加工に適するよう均質性・硬度が高められています[22] 。例えばスーパーハードではΩ-PFSフィラーという新開発フィラーと高強度モノマー技術を組み合わせ、大臼歯部単冠に耐えうる曲げ強さを実現 しています[27] 。一方、ベラシアSAは義歯床にレジンで固定される人工歯であるため、単体で過度な強度を持たせるよりも、義歯全体で力を分散する設計になっています。この違いから、用途が固定補綴か可撤補綴か という根本的な差異があります。
まとめると、松風CAD/CAMブロック vs ベラシアSA人工歯 の比較ポイントは以下の通りです:
用途の違い : ブロックHCシリーズは削り出しクラウンやインレー用(支台歯に接着する補綴物)[22] 。ベラシアSAは義歯用人工歯(レジン床に埋設・一体化する補綴物)。
デザインコンセプト : ブロックは最終補綴物の形態をCAD設計する必要があり、一歯ごとに形を作ります。ベラシアSAは既製品として理想的形態が付与済み で、排列するだけで全体の咬合バランスまで考慮されています[2] 。言い換えれば、ベラシアSAは「形を作り込んだ材料」 、ブロックは「形を作るための材料」 という違いがあります。
機械的特性 : ブロック系材料の方がフィラー含有率が高く、硬度・曲げ強さは高い傾向(タイプにもよるが大臼歯用で200MPa前後)です。一方ベラシアSAも高耐久ですが、義歯床と一体化して機能する前提で作られているため、過度に硬すぎないマイルドさもあります[22] 。結果として、ブロック冠は硬質で削れにくく長期安定、ベラシアSA歯は適度に摩耗しつつ衝撃を吸収する性質があります。
審美性 : ブロックは単層~多層のカラー展開があり、前歯用はマルチレイヤーでエナメル質と象牙質のグラデーションを再現するなど色調再現性に優れ ます[28] 。ベラシアSAも自然な色調や透明感を持ちますが、色調は3色と限定的で、細かなシェードマッチには他社人工歯や陶歯を選ぶ必要が出る場合もあります。ただ義歯では複数歯の調和が重視されるため、極端な漂白色などは要求されにくく、実用上大きな問題にはなりにくいでしょう。
コスト : 前述の通り、一歯当たりではベラシアSAの方が安価です[7] 。しかしブロック冠は一本ずつ装着する補綴物であり、患者負担はクラウン1本単位、義歯は装置全体での費用となるため、治療単位の比較ではケースバイケースです。保険CAD/CAM冠は金属冠に比べ安価に白い歯を提供できますが、義歯の場合はレジン人工歯が基本であり本製品もその範疇です(保険内で使用可能)。つまり費用面では義歯用人工歯というカテゴリ自体が患者負担を抑えられる 領域と言えます。
他社製品との比較 : 他社のCAD/CAM用高強度レジンブロックにはGCの「セラスマート270」、クラレの「カタナ Avenciaブロック」などがあります。これらもレジンにナノフィラーやガラスセラミックスを分散し強化した材料で、耐久性・審美性を高めています[22] 。ブロック間ではフィラー配合量や粒径の違いが性能差となり[22] 、各社曲げ強さ150~250MPa、フィラー充填率約70wt%前後が主流です[29] 。ベラシアSAも同様のフィラー技術を義歯に応用した形ですが、義歯用途ゆえに他社ブロックとは直接競合しません。一方、他社の人工歯 との比較では、Ivoclar社「Phonares II」やVITA社「VITAPAN」「VIONIC」シリーズ、国産ではヤマ八「New Ace」「Naperce」などが挙げられます[30] 。これらの中でベラシアSAが差別化できているのは、咬合機能を付与した形態設計 とデジタル連携のしやすさ です。PhonaresIIなどは審美性や強度に優れますが、その分価格が高く、また排列時に個々の技工士のスキルに委ねる部分が大きいです。ベラシアSAは操作性と機能性をパッケージ化 して提供することで、安定した品質の義歯製作をサポートする位置付けと言えます[31] 。さらに同一形態でポーセレン人工歯版(ベラシアSAポーセレン) も提供しており、症例に応じてレジン歯と磁器歯を選択できる点も松風ならではの強みです[32] 。例えば全く同じ歯型で「硬質レジン歯」「陶歯」「連結一体型熱可塑性樹脂歯」が揃っているため、将来的なグレードアップ(レジン義歯から陶歯義歯への変更など)も容易です[32] 。このような柔軟性も含め、ベラシアSAシリーズは義歯用人工歯のトータルソリューション として位置付けられ、競合製品と一線を画しています。
この製品が向いているユーザー像 ベラシアSAポステリアは、義歯治療に携わる全ての歯科医師・歯科技工士に適した製品 ですが、特に恩恵を受けやすいユーザー像として以下のようなケースが考えられます。
総義歯の経験が浅い歯科医師・技工士 :咬合調整や排列に習熟していなくても、本製品を使えば基本的な噛み合わせが得られやすいため、義歯製作のハードルを下げてくれます[2] 。例えば開業間もない歯科医師が保険の総義歯に本製品を採用することで、比較的スムーズに適合の良い義歯を提供できるでしょう。
義歯製作の効率を重視する技工所・クリニック :チェアサイド・ラボサイド双方で作業時間短縮が図れるため[2] 、多くの義歯症例を扱う施設に向いています。大量の義歯を製作する保険専門の技工所や、訪問歯科で短時間で義歯調整を行いたい場合など、本製品の時短効果が直結して利益や患者満足に繋がります。
デジタルデンチャーに取り組むユーザー :3Dスキャン・CAD設計・プリンター出力といったデジタル義歯製作を導入している(または計画している)ラボや歯科医院には、本製品は非常にマッチします。既製人工歯を活用するハイブリッドなデジタルデンチャーはコスト低減にも有利で[20] 、ベラシアSAのライブラリ対応により精度の高い設計がそのまま臨床に活かせます[30] 。自院で義歯を内製化したい歯科医院にも適しており、松風のS-WAVEシステム導入先などでは好んで使用されています。
患者さんの金属アレルギーや審美要求に配慮する医院 :金属床義歯では床部分は金属になりますが、人工歯は依然レジンや陶材です。本製品はメタルフリー材料であり、しかも天然歯に近い美観を有するため、金属アレルギー患者や「できるだけ白く自然な入れ歯」を望む患者にも適しています。保険の範囲内でクオリティの高い白い歯を提供できる点は、患者満足度向上にも貢献します。
義歯治療を標榜する専門クリニック :難症例の義歯を扱う専門家にとっても、本製品の機能形態は有用です。もちろん高度な専門医はどんな人工歯でも調整できますが、初めからバランスの良い形態を持つ歯を選ぶことで再現性が高まり、より多くの症例に安定した結果をもたらせます。例えば高齢者の咬合崩壊症例で再構成が必要な場合など、ベラシアSA形態は一つの指標(ガイド)となって治療を助けてくれるでしょう。
要するに、「義歯製作の品質安定と効率化」を求めるユーザー に向いた製品です。大学病院や技工士養成校でも教材として採用されることがあり、教育的観点でも有用とされています(※ある研究では、学生による削合実習でベラシアSA形態の方が歯の形態理解・咬合面形成の効率が向上したとの報告があります[33] )。このことからも、義歯製作のスタンダードとして幅広いユーザー層に受け入れられる製品だと考えられます。
導入時の注意点(導入条件・前提知識・適合性・製作上の留意事項) ベラシアSAポステリアを導入・使用する際には、いくつか押さえておくべきポイント があります。
まず導入条件・前提知識 として、本製品は歯科医療従事者向けの管理医療機器であり[21] 、基本的には歯科医院または歯科技工所経由で入手します。特別な資格が必要なわけではありませんが、義歯製作の基礎知識(咬合の考え方、人工歯の選択法など)は前提となります。特に本製品は平均値的な咬合器設定にマッチするよう作られているため、可能であればフェイスボウ移送や平均値咬合器の使用 など、咬合器を適切に扱える環境が望ましいです。もっとも、それが難しい場合でも概ねの咬合はあたりやすい形態ですが[2] 、症例によっては若干の調整が必要になる可能性がある点は留意してください[8] 。
機器・システムとの適合性 では、デジタルワークフローで使う際に注意があります。Exocad等でライブラリを用いる場合、ソフトのバージョンやライブラリデータの有無を確認し、必要なら松風や代理店からデータ提供を受けてください。3Dプリンタで義歯床を製作する場合は、使用するレジン材料が既製人工歯との接着を許可されたもの か確認が必要です[12] 。日本国内ではDentca社やDetax社の義歯床レジンが承認されていますが、それ以外の場合は自己責任となります。接着には通常、義歯床用レジンと同系統のアクリルレジンを用いたり、光重合レジンを用います。ベラシアSA自体はレジン系なので、ポーセレン歯のように専用シリコーンで人工歯を固定してから熱重合…といった煩雑な工程は不要ですが、確実にレジンが流れ込むよう適合させる工夫 (例:人工歯側の清掃やプライマー塗布、湯せんによる一時的なアクリル軟化など)は行った方が安全です。M形態の舌側ステップは保持に有効ですが、逆にここにレジンがきちんと充填されないと隙間になるので、注意して埋没・重合を行ってください[3] 。
アナログ製作の場合、従来の人工歯と同じくワックストライインで試適が可能です。人工歯自体の適合は既製品ゆえ問題ありませんが、排列時には対向する上下でシリーズを揃える ことが重要です。松風では上下で対応する歯型を用意しています(例:S32上顎に対しS32下顎を組み合わせるなど)。前歯部もできれば同シリーズの「ベラシアSAアンテリア」を用いる方が、咬合誘導の一貫性が保たれます[2] 。異なるメーカーの前歯と組み合わせると、前歯ガイドや偏心運動時の接触関係がずれ込む可能性があるため注意が必要です。どうしても他社前歯を使う場合は、最終的な咬合調整でバランスを取ることになります。
周辺機器との適合 については、松風S-WAVEシステムの場合は各機器(スキャナ、CAMソフト、3Dプリンタ、重合器など)が専用に調整されています[6] [14] 。特にバキュームフィット方式を採用する際は、専用の減圧装置付き重合器を使用する必要があります[14] 。この方法により収縮を抑えるメリットが得られるので、S-WAVE導入時には機器構成を確認してください。自前で工夫する場合でも、例えば重合時に圧接するとか、光重合+追加熱重合を組み合わせるなどして変形を最小限に抑える工夫 が推奨されます[15] 。また、印象採得や咬合採得からデジタル移行する場合には、口腔内スキャナや咬合器付き咬合スキャナの使用も検討すると良いでしょう。コアフロント社の事例ではCTとビニール袋を利用した義歯の1分スキャンなどユニークな手法も紹介されています[34] が、いずれにせよ正確なデジタルデータ取得が成功の鍵となります。
製作上の留意点として、最終的な研磨と仕上げ があります。ベラシアSAは研磨性に優れるものの、粗いバフや研磨材を使うとフィラーの脱落で表面がザラつく恐れがあります。メーカー提供の研磨セットや細目の研磨剤を用い、鏡面に近い滑沢な表面 に仕上げることでプラーク付着や着色を防げます。咬合調整した部位も、できるだけ滑らかに研磨しておきます。咬合調整といえば、患者装着後にどうしても高点がある場合は、レジン歯なので口腔内でも調整自体は容易ですが、なるべく調整量を減らすためにも事前の咬合平衡をしっかり行うことが望ましいです[2] 。
最後に、保管・取扱 についての注意です。人工歯は直射日光や高温を避け、清潔な容器で保管します。レジン材料なので長期保管で多少色調がくすむ可能性がありますが、通常の在庫サイクルで問題になることは少ないでしょう。色合わせ用に実物サンプルを取り寄せ、患者説明に使うのも有効です。総じて、特別な難しさはありませんが「デジタル技工への移行時の注意」「レジン歯固有の扱い方のコツ」を押さえておけば、ベラシアSAポステリアの導入はスムーズに進むでしょう。メリットを最大限享受するためにも、上記のポイントに留意して活用してみてください。
[3] ベラシア SA ポステリア M形態 − 製品情報|OralStudio オーラルスタジオ
[4][5] ベラシア SA ポステリア (臼歯) -製品情報-
[9] [16] 製品詳細「べラシアSAポステリア」 | フォルディネット
[22] 〖完全比較〗CADCAMブロックのマテリアル特性 | CAD/CAM総合情報サイト Digital Dental academy
[23] 【FEEDデンタル】松風ブロックHCの通販
[24] [35] ベラシア SA ポステリア (臼歯) − 製品情報|OralStudio オーラルスタジオ
[29] [PDF] KZR-CAD HRブロックシリーズ 製品パンフレット - YAMAKIN株式会社
[33] 基礎実習における削合用試作四倍大歯冠石膏模型の有用性 - J-Stage